《コラム》消費税の基本的な仕組み

◆インボイス制度開始まで1年を切った
 消費税のインボイス制度開始は令和5年10月1日の予定です。この「インボイス」とは、正確な適用税率や消費税額等を伝える書類のことで、インボイス制度が始まると、仕入先が免税事業者の場合、今まで認められていた「仕入税額控除」が認められなくなります。
 免税事業者の方や経理にタッチしない方は「仕入税額控除? なんのことだ」と思われるかもしれません。まずは消費税の基本的な仕組みを理解しましょう。

◆消費税の内訳
 消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く課税される税で、消費者が負担し事業者が納付します。
 標準税率10%、食品等の軽減税率は8%となっていますが、そのうちの22/78、標準税率で2.2%、軽減税率で1.76%分は「地方消費税」として扱われ、いったん国の出先機関である税務署に納付され、地方消費税部分は統計数値に基づき各都道府県に分配される仕組みです。

◆消費税の負担と納付の流れ
 消費税は、生産、流通などの各取引段階で二重三重に税がかかることのないよう、税が累積しない仕組みになっています。
・各取引にかかる消費税の例(標準税率)
製造業:売上50,000(+消費税5,000)
卸売業:仕入50,000(+消費税5,000)
     売上70,000(+消費税7,000)
小売業:仕入70,000(+消費税7,000)
     売上100,000(+消費税10,000)
消費者:100,000(+消費税10,000)

 上記の例示の場合、消費者が負担した消費税10,000円を、小売業者は仕入と売上の差額分の3,000円、卸売業者は差額2,000円を、製造業者は5,000円を納付する仕組みになっています。
 先に述べた通り、インボイス制度が始まると、免税事業者から仕入れている場合「仕入先に払った消費税」が、差し引けなくなります。例示で言うと、卸売業者が免税事業者だった場合、小売業者は10,000円消費税を納めることになるわけです。
 来年10月のインボイス制度(適格請求書等保存方式)開始後、「免税事業者と取引を続ける」としている企業が14%にとどまっているとの調査結果を日本商工会議所が公表しました。調査は全国の会員企業1265者から有効回答を得たもの。

 インボイス制度が始まると、適格請求書発行事業者として登録できない免税事業者からの仕入分について仕入税額控除が受けられなくなり、従来よりも消費税分だけ損することになります。制度開始後は経過措置が設けられており、免税事業者からの仕入であっても2026年9月までは80%、その後29年9月までは50%は控除可能。しかし29年10月以降は、免税事業者からの仕入について一律で控除できなくなります。

 日商の調査では、インボイス制度開始後の免税事業者からの仕入ついて「一切行わない」(8.9%)、「一部を除いて取引は行わない」(5.8%)、「経過措置の間は取引を行う」(13.7%)と、計28.4%の事業者が取引を見直す方針です。

 一方、「取引を行うかどうかの判断はしない」と、インボイス制度に関係なく取引を継続するとした事業者は14.1%にとどまりました。「まだ分からない」と方針が定まっていない事業者は54.6%と過半数を占めています。

 取引を見直すとした事業者の今後の対応予定としては、「インボイス発行事業者になるよう要請する」が最も多く64.8%。「知識習得等のサポートをする」(17.0%)、「自社の社員とする」(0.6%)と続いています。

 一方、免税事業者397者を対象にしたアンケートでは、課税事業者への転換に不安の声が目立ちました。課税事業者に変わることにより、「消費税負担により資金繰りが厳しくなる」(62.0%、複数回答)、「消費税分の価格転嫁が難しく、利益が減少する」(44.8%)と消費税の負担が経営に直撃すると懸念する声が多数を占めています。「請求書の様式変更等の事務負担に対応できない」(33.2%)と事務コスト増への懸念も続きました。また、「そもそも消費税制度を理解できていない」(19.6%)、「消費税申告等の手続きに対応できない」(14.9%)と税務上の知識が不足していて、事務処理や申告を外注するにしても「税理士等への依頼費用が負担となる」(7.1%)としています。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

 

2022年11月01日