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《コラム》帰属所得と財産分与

 2023年の共働き世帯数は、専業主婦世帯数の3倍近くになり、家事・育児は夫婦で共に担う時代になりましたが、平成の初期まで専業主婦の世帯数の方が多く、配偶者の内助の功で家庭が運営されていました。

◆帰属所得は課税されない
 配偶者が家庭内で家事育児を行うと、その役務提供には経済的価値が生まれます。これを帰属所得といいます。しかし、家事育児労働に対価が支払われることはなく、課税もされません。これは家庭内の労務報酬の算定が実際には困難であることによります。また所得税は一人ひとりに課税されるのですが、家計を消費単位として見た場合、帰属所得は家計に包含されてしまうので課税しないという見方をしているのかもしれません。

◆財産分与で2分の1を清算
 離婚すると財産分与が行われます。婚姻中、各人の給与や事業などから得た財産と共有名義の財産、帰属不明の財産は共有財産となり、その2分の1が夫婦間で清算されます。
 給与や事業収入などで得た財産は、婚姻中は各人の特有財産なのですが、離婚すると夫婦の協力により得られた共有財産として財産分与されます。将来、受け取る厚生年金も、婚姻期間に対応する年金額の2分の1は財産分与の対象となります。

◆財産分与に対する贈与課税
 財産分与は資産の贈与ですが、贈与課税はされません。これは婚姻中に生じた財産分与請求権が離婚時に行使され、同等の価値の財産を得るためとされています。ただし、分与額が多すぎる部分や相続税の回避と認められる場合は贈与課税されますので注意しましょう。
 また、財産分与者は財産分与義務が消滅して得られる利益と財産分与により失う財産の価値が見合うため、課税されません。ただし、不動産など譲渡所得の基因となる資産が移転する場合は、財産分与時に実現する譲渡所得に課税されますので、こちらも注意しましょう。

◆死亡すると相続財産に変わる
 夫婦が死別すると財産は遺贈されたものを除き相続財産となり、配偶者はその法定相続分を取得できます。ここでは財産分与のときの共有財産は認識されず、相続財産になっています。配偶者には相続税の税額軽減が適用され、老後の生活保障に一定の配慮がされています。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

 

 

 


 
2024年11月26日

《コラム》同族会社が借主の場合の貸宅地の評価


 借地権が設定された被相続人の土地は、相続税では「貸宅地」とされ、自用地価額から借地権価額を控除した金額で評価します。

◆通常の地代の場合は、財産評価通達で評価
 土地の使用の対価として通常、権利金を収受する慣行のある地域で通常の賃貸借契約により通常の地代を支払うとき、貸宅地は財産評価通達により評価されます。
 なお、通常の地代未満の地代を支払う場合も以下の算式で評価します。
 ●貸宅地の価額=自用地価額×(1-借地権割合)

◆同族会社に貸付けする場合の評価
 被相続人が同族関係者となっている同族会社にアパート経営をさせるため、自分の土地に借地権を設定する場合、借地契約を第三者との取引と異なる条件で行うと権利金等と実際の地代の水準に応じて借地権と貸宅地の評価は影響を受けます。
 以下は、権利金等の支払がない場合です。
① 相当の地代を支払っている場合
 権利金の認定課税を回避するため、権利金の支払に代えて相当の地代を支払う場合、借地権評価額は零、貸宅地の評価額は自用地価額の80%となります。
② 通常の地代を超え、相当の地代未満
 貸宅地の価額は、実際に支払う地代の水準に応じて決まります。
 ●貸宅地の価額=自用地価額-自用地価額×借地権割合×{1-(実際の地代-通常の地代)/(相当の地代-通常の地代)}
 ただし、貸宅地の価額が自用地価額の80%を超える場合は、被相続人が借地契約により土地利用の制約を受けていたことを考慮して80%を上限とします。
 なお、①②とも、20%分は同族会社の借地権として同族会社の株式評価上、純資産価額に算入されます。

◆小規模宅地等の特例による評価減
 さらに一定の要件を満たすと「貸宅地」は「貸付事業用宅地等」として小規模宅地等の特例が適用されます(200㎡まで50%減)。同族会社との賃貸借契約の締結、地代の支払(有償貸付)が前提となります。ただし、固定資産税程度の地代設定では営利性が認められず、「小規模宅地等の特例」の適用を受けることはできません。適用には相続開始前3年を超えて被相続人等の貸付事業の用に供されていること(特定貸付事業は3年以内も可)、事業承継要件、保有継続要件を満たすことが必要です。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

 

 


 
2024年11月15日

相続税路線価 16年ぶり2%超上昇 提供:エヌピー通信社


 国税庁は7月1日、相続税や贈与税の算定基準となる2024年分の路線価(1月1日時点)、いわゆる〝相続税路線価〟を発表しました。全国約31万5千地点の宅地の平均は前年比で2.3%上昇。上昇は3年連続で、上昇率が2%を超えるのは08年(上昇率10.0%)以来、じつに16年ぶりのこと。現在の算出方法となった10年以降では最大の上昇率となりました。

 また能登半島地震の被災地の相続税路線価には「調整率」が適用されます。被害の大きさに応じて評価額が10~45%引き下げられることが決定。適用は阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などに続き7例目です。23年2月28日~同24年末に相続した土地と、23年、24年に贈与を受けた土地が対象です。路線価に調整率を乗じて評価額を算出。調整率が最も高かったのは輪島市河井町や珠洲市飯田町などの「0.55」(引下率45%)でした。

 また、原発事故によって24年1月1日時点で「帰還困難区域」に指定されている域内の土地については「路線価等を定めることが困難」であるため、「23年分と同様に相続税等の申告にあたってはその価額を『0』として差し支えない」こととされています。


<情報提供:エヌピー通信社>

 


 
2024年11月15日

《コラム》相続時精算課税贈与者が贈与した年に死亡した場合

◆相続時精算課税制度とは
 相続時精算課税制度は、受贈者の選択により、60歳以上の父母、祖父母などの直系尊属から18歳以上の直系卑属である推定相続人又は孫が贈与を受けたとき、課税価格から2500万円の特別控除後の残額に20%の税率を乗じた額を課税し、贈与者が死亡したときは、相続税額を計算する過程で先に課税された贈与税相当額を相続税額から控除して精算するものです。
 相続税の申告書において相続時精算課税贈与を受けた財産の価額を相続税の課税価格に加算します。相続税には基礎控除(3000万円と法定相続人1人当たり600万円)があるので、贈与税額が相続税額を超えるときは、先に申告納付した贈与税の還付を受けることができます。また相続時精算課税制度は贈与者ごとに、父母の双方からそれぞれ贈与を受けることもできます。

◆贈与者が死亡した年の贈与は相続税で申告
 相続時精算課税の適用を初めて受ける者は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、相続時精算課税選択届出書を贈与税の申告書と一緒に提出します。
 相続時精算課税の適用を初めて受ける年に贈与者が死亡したときは、相続時精算課税選択届出書を贈与を受けた年の翌年3月15日(贈与税の申告期限)又は相続開始の日の翌日から10か月を経過する日(相続税の申告期限)のいずれか早い日までに相続税の納税地の税務署長に提出します。
 このとき贈与税の申告書の提出は要さず、相続税の申告書を提出します。

◆令和6年施行の改正内容
 令和5年度税制改正により、令和6年1月1日以後の相続時精算課税贈与には、110万円の基礎控除が創設されました。110万円以下の贈与の場合は、贈与税の申告は不要となりますが、相続時精算課税選択届出書の提出は必要です。
 また相続時精算課税贈与を受けた土地・建物が相続税の申告期限までの間に、令和6年1月1日以後に災害により一定の被害を受けた場合は、相続税の課税価格に加算する額の計算の際、被災価額(保険金等で補てんされた金額を差引き後)を贈与時の価額から控除できます。

◆届出書の提出もれは暦年課税で思わぬ負担
 相続時精算課税の適用を受けようとするとき、相続時精算課税選択届出書の提出をうっかり忘れると暦年課税が適用され、思わぬ税負担が生じますので注意しましょう。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)


 
2024年04月09日

3月から相続手続きがラクに! 提供:エヌピー通信社


 相続の手続きはいろいろと大変です。相続人を確定させるためには、亡くなった人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本をそろえる必要があります。具体的には、まずは死亡した時の本籍地で最新の戸籍謄本を取り、その情報を基にひとつ前の戸籍謄本を取ります。またそれを基にひとつ前の戸籍を取り、これを繰り返して、出生までさかのぼるというわけです。遠方であれば郵便で取り寄せる手間もかかり、非常に面倒くさいのが実態です。

 2017年にスタートした「法定相続情報証明制度」は、相続手続にかかる手間を大幅に軽減できるものです。しかし、それでも最初に証明書を作るために、出生から死亡までの戸籍謄本をひと揃い集めなければならない点に変わりはありません。

 この一連の煩雑な手続きを劇的にラクにしてくれそうなのが、3月1日にスタートする「広域交付制度」です。同制度は、全国どこの本籍地の戸籍謄本であっても、出生から死亡までの戸籍謄本一式が最寄りの役所窓口だけで一括で請求できるというもの。これにより、謄本を順にたどってそれぞれの本籍地の役所に手続きを行って……という、これまでかかっていた手間や時間を、大幅に減らすことが可能となります。

 同制度の注意点は、申請を行えるのは配偶者や親、子といった相続人本人のみであることです。税理士や弁護士といった専門家による代行はできない点に注意が必要です。

 


<情報提供:エヌピー通信社>
 

2024年02月05日

《コラム》未支給年金の課税関係


 被相続人が死亡するまでの間に受けるべきであった年金で支給されていなかったもの(未支給年金といいます)には相続税が課されません。相続税法の非課税財産と規定されているわけでもないのに、課税されないのは何故でしょうか。
 国税庁のサイトには、遺族の未支給年金請求権に相続税を課さない理由を次のように解説しています。

①最高裁が未支給年金の相続性を否定
 国民年金や厚生年金等の公的年金では、年金受給者が死亡した場合、被相続人と生計を一にしていた3親等内の親族の中から、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、それ以外の者の順に未支給年金の受取人を定めています。
 未支給年金の請求について、最高裁は、その相続性を否定し、民法の相続とは別に遺族の生活保障を目的とした立場から遺族に未支給年金の支給の請求を認め、その請求権は相続の対象とはならないと判示したため、国税庁も本来の相続財産として相続税の課税対象とならないと解しています。

②定期金を受給する権利に該当しない
 個人年金や退職年金の受給権については、継続受取人に対し、みなし相続財産として相続税が課されます。年金で受給するか一時金で受給するかは、年金受取人の選択で決めることができ、課税上は年金も一時金も同様に、みなし相続財産となります。
 これに対し、国民年金や厚生年金等の未支給年金は、法律で受給権者と受給する順位が定められ、一方的に付与されるものであり、最初から一時金のみを支給するため、みなし相続財産に該当しません。
 なお、未支給年金の受取人には一時所得として所得税が課されます。

◆遺族への年金には相続税を課さない
 国民年金、厚生年金等の公的年金で支給される遺族年金には、相続税も所得税も課さず、未支給年金にも相続税を課さないことが、それぞれの法律で規定されています。  
 相続税では、通達で遺族年金は課税しない旨が示され、未支給年金は質疑応答事例により、課税しない旨が示されています。
 個人年金や退職年金は、公的年金に上乗せして老後の生活を補てんするので遺産分割の対象となり、相続税が課されるのに対し、遺族年金や未支給年金は、遺族の生活保障のために支給されるので遺産分割の対象とならず、相続税を課さないと考えると理解しやすいかもしれません。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)


 

2023年07月05日

2023年公示地価 上昇幅が拡大 提供:エヌピー通信社


 国土交通省は3月下旬、今年1月1日時点での地価を公表しました。コロナ禍以降で初めてプラスに転じた昨年に続き、2年連続のプラスとなり、上昇幅も拡大しています。住宅地、商業地、工業地などを含む全用途の全国平均はプラス1.6%でした。ただコロナ禍の影響から脱することで、上昇トレンドにあるエリアと下降を続けるエリアとの二極化が再びあらわになっていて、土地オーナーはエリアの特性に合わせた相続対策が必要となっていきそうです。

 住宅地では、コロナ禍での在宅勤務の需要増から0.5%の伸びとなった前年から上昇幅を拡大し、1.4%のプラスとなりました。特に札幌、仙台、広島、福岡の地方中枢4都市は前年比8.6%増と、三大都市圏の1.7%をはるかに凌ぐ好調ぶりを示しました。

 商業地でも都市部を中心に店舗需要が回復傾向にあり、堅調なオフィス需要やマンション用地需要などから地価の回復傾向がより進んでいます。全国平均は1.8%プラスで、前年の0.4%から大きく伸びました。工業地も前年比3.1%増と、堅実に上昇しています。

 上昇率トップは商業地、住宅地ともに前年に続き北海道北広島市。札幌市内の高騰で隣接する北広島市など周辺の需要が高く、上昇率は住宅地で30%、商業地で28.4%と目覚ましい上昇率を示しました。そのほか10位までを北海道が独占。一方、下落率トップは広島県江田島市の商業地で、マイナス7.6%でした。

 地価が最も高かったのは、17年連続で東京都中央区銀座の山野楽器本店。ここ2年は価格が下落していましたが、今年は3年ぶりにプラスに転じ、1平方メートル当たり5380万円でした。

 今後の地価動向は、ノーマスクが解禁されるなかで新型コロナを巡る状況がどう変化し、国の経済施策がどう講じられるかにかかっているといえそうです。

<情報提供:エヌピー通信社>


 

2023年04月28日

《コラム》相続税申告前に相続人が死亡した場合


 短期間に相続が相次ぎ発生することがあります。父、母、子2人の4人の親族関係で母が4月1日に死亡、父と子2人が相続人となりましたが、相続税の申告前に父も続けて8月1日に死亡した場合の申告は、どうなるでしょうか?

◆申告義務は相続人に承継される
 一次相続(母)の相続税申告義務は、父と子2人にありますが、父がその後、死亡したため、父の申告義務は相続人(子2人)が承継します。子2人は、一次相続(母)の相続人として相続開始を知った日の翌日から10か月後の翌年2月1日が申告期限となり、父から承継した一次相続(母)の申告期限は、父の相続開始を知った日の翌日から10か月後の翌年6月1日となります。
 なお、二次相続(父)の申告期限は、父の相続開始を知った日の翌日から10か月後の翌年6月1日となります。

◆一次相続の遺産分割協議書の記載
 子2人は父の権利義務を承継します。一次相続(母)の遺産分割協議書には、一次相続の被相続人(母)、二次相続の被相続人(父)の最後の本籍、最後の住所、出生日、死亡日、氏名と、相続人兼父相続人として子2人の本籍、住所、出生日、氏名が記載されます。  
 子2人は、母の遺産分割協議に参加し、父と子2人がそれぞれ、母から相続する財産、債務について遺産分割協議書を作成します。また、父が一次相続で母の財産・債務をどのように承継するかは、父の生前の希望も尊重しつつ、二次相続の承継による税負担と併せて検討することになります。

◆法定相続情報は被相続人ごとに作成
 一次相続(母)の相続税申告書には、一次相続(母)の法定相続情報一覧図(相続人は、父と子2人)と二次相続(父)の法定相続情報一覧図(相続人は、子2人)を、それぞれ別々に作成し、添付する必要があります。
 これは、法定相続情報一覧図は、被相続人が死亡した時点で誰が法定相続人であるかを示すものだからです。
 したがって一次相続(母)の法定相続情報一覧図には、被相続人は母、相続人は父と子2人の情報を記載し、二次相続(父)の法定相続情報一覧図には、被相続人は父、相続人は子2人の情報を記載します。先に死亡した母を「亡妻」と記載することもあります。2つの法定相続情報一覧図を重ねることにより、一次相続の申告は二次相続を経て子2人に承継されることが示され、遺産分割協議書の記載と整合します。


 

(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2023年04月26日

相続土地国庫帰属制度 法務局で相談開始 提供:エヌピー通信社


 法務省では2月末、全国の法務局・地方法務局の不動産登記部門で「相続土地国庫帰属制度」の対面相談・電話相談を開始しました。法務局の担当者に対し、引き取りを希望する土地が申請条件に合致しているかどうかや審査の大まかな見通しを尋ねることができます。

 相続土地国庫帰属制度は、相続で引き継いだが不要になった土地を国に引き取ってもらえる制度。4月27日からスタートします。制度を利用するには手放したい土地が国の定める基準を満たしている審査を受ける必要があり、①他人による使用が予定される土地、②建物のある土地、③土壌汚染されている土地、④境界が明らかでない土地、⑤通常の管理に過分な費用・労力がかかる土地――などは受け付けないとしています。

 対面相談・電話相談は、インターネット(法務局手続案内予約サービス)での事前予約制で、相談時間は1日1回30分間。法務省は相談時に、土地の情報や相談内容を書き込んだ「相続土地国庫帰属相談票」や、引き取ることができない土地に当てはまらないかどうかを確認できる「チェックシート」とともに、登記事項証明書または登記簿謄本、法務局で取得した地図または公図、法務局で取得した地積測量図、土地の現況・全体が分かる画像や写真などをできるだけ持参することを推奨しています。


<情報提供:エヌピー通信社> 

 

2023年04月07日

《コラム》相続時精算課税の普及が戦略


◆相続時精算課税制度は評判悪し
 相続時精算課税制度は、贈与額が2500万円に達するまでは贈与税がかからず、2500万円を超えた部分は贈与税率20%で課税される制度ですが、贈与者死亡時の相続税は、相続時精算課税の適用を受けた受贈財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額との合算額を基に計算し、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。
 なお、次に掲げるようなデメリットがあり、この制度の積極的な活用の呼びかけは少なく、利用者の数も限られていました。

◆現行相続時精算課税制度のデメリット
(1)暦年課税制度に戻ることが出来ない
(2)基礎控除の制度がなく110万円以下の贈与でも贈与税の申告が必要
(3)少額でも贈与税申告書の提出漏れには20%の加算税
(4)受贈財産が災害等で滅失しても考慮されない
(5)不動産だと小規模宅地の特例が使えず、不動産取得税の負担があり、登録免許税も相続時より高い
(6)相続税の物納には使えない
(7)贈与者である祖父の死亡前に相続時精算課税制度適用者である父が死亡したような場合、その相続人となる子は、父の相続に係る相続税の負担と、承継した父の相続時精算課税制度適用による納税義務の負担との二重課税となる

◆デメリット部分解消への税制改正
 今年の税制改正で、上記の(2)~(4)について見直しがなされることになりました。
1.相続時精算課税制度内に110万円の基礎控除制度が設けられ、毎年の特定贈与者からの贈与額からその基礎控除が引かれるとともに、その範囲内の贈与は申告不要とされ、相続に際しては、課税価格に加算される相続時精算課税受贈財産の価額は、先の基礎控除をした後の残額となります。110万円以下の毎年贈与だったら、暦年課税の3年内贈与加算相当部分も圧縮され、より優遇です。
2. 相続時精算課税で受贈した土地・建物が相続税申告時までに災害により滅失等の被害を受けた場合は、相続税の申告での課税標準への加算額から当該被害額を減額することとされました。
 今後、相続時精算課税制度の利用が大幅に増加することが予想されます。
 

(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2023年03月14日

タワマン節税が抜本的規制へ 提供:エヌピー通信社


 相続税評価額と実勢価格のかい離を利用した「タワマン節税」の規制に向けて、国税庁が1月30日に第1回となる有識者会議を開催し、議論をスタートさせました。タワマン節税を巡っては、税負担を著しく軽減させる事例に限って通達で認められた「総則6項」を用いて後出しで否認するという対応がとられてきましたが、評価ルールそのものを見直すことで抜本的な規制を図ります。

 マンションは階数が変わったとしても住戸面積が同じなら固定資産としての評価額は変わりません。その一方で、実売価格は眺望のよい上階になればなるほど高くなるため、高層階ほど実勢価格と評価額の開きが大きくなる傾向があります。これを利用し、相続を見込んでタワーマンションの高層階を購入しておき、相続税を納めた直後に高額で売却するのが「タワマン節税」です。

 あくまで合法な手段ではあるものの、当局はこれを税逃れ目的の行為とみなし、税額の軽減効果が著しい事例にターゲットを絞り、「総則6項」を用いて否認してきました。この項目が適用されれば最終的には国税側の言い値が適用されることになります。

 昨年12月に与党が発表した税制改正大綱では、「現状を放置すれば、マンションの相続税評価額が個別に判断されることもあり、納税者の予見可能性を確保する必要もある」と見直しの必要性に言及し、「時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」と明記していました。

 1月30日に開催された第1回の有識者会議に出席した委員からは、「価格かい離はタワマンだけの問題ではなく、マンション全体の評価ルールを見直すべき」、「住宅購入者がマンションか一戸建てかを選ぶ際のバイアスとならないよう、急激な評価増は避けるべき」などの意見が上がっています。会議では全体の方向性として、一部の税逃れの防止のみが目的ではなく、評価額と時価のかい離の是正を目指すことを確認しました。有識者会議は今後も複数回開催される予定で、その結論を基に相続税の財産評価基本通達が見直される見込みです。
 

<情報提供:エヌピー通信社>
 

 

2023年03月06日

《コラム》令和5年度税制改正大綱 資産課税編


◆資産移転時期の選択に中立的な税制の構築
 被相続人の高齢化に伴い、個人金融資産などの資産が高齢者に偏在するなかで、若年層への資産移転を図るとともに、相続や贈与に伴う税負担の違いが資産移転の時期の選択にできるだけ影響しないようにするため、資産課税の見直しが図られます。

◆相続時精算課税贈与は利用しやすく改正
 相続時精算課税制度では、特別控除額2,500万円とは別に、課税価格から暦年で110万円の基礎控除を受けられるようになります。また、相続財産の価額に加算される相続時精算課税贈与額は、基礎控除後の残額となります。これは、暦年贈与課税と同様に、少額贈与については課税せず、事務負担の軽減をはかるものとなっています。
 また、贈与を受けた土地・建物が災害により被害を受けて資産価値が下落した場合、相続税の課税価格に加算される財産の価額は、被害を受けた部分の金額を控除した額となります。いずれも、令和6年1月1日以後の贈与から適用されます。

◆暦年課税贈与の加算期間は、7年に延長
 暦年課税贈与は、相続開始前7年間(現行は、3年間)に受けたものが、相続税の課税価格に加算されるようになります。この場合、延長された4年間の贈与は、贈与を受けた財産の合計額から100万円を控除できます。令和6年1月1日以後の贈与から適用となります。

◆教育資金、結婚・子育て資金贈与は延長へ
 教育資金の一括贈与に係る非課税制度、結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税制度は、富裕層に大きな節税メリットがあり、資産格差を固定化させる一方、近年は利用件数が低迷していました。政府税調ではこれらの制度の廃止または縮小の意見も多く出されていましたが、税制改正大綱では、節税的な利用につながらないよう、一部改正の上、教育資金贈与の非課税制度は、適用期限を3年延長、結婚・子育て資金贈与の非課税制度は、2年延長となりました。

◆マンション評価は適正化を検討
 この他、閣議決定前に公表された自民党・公明党の税制改正大綱(R4.12.16)では、マンションの財産評価について、マンションの市場価格と財産評価基本通達に基づく相続税評価額との間に大きな乖離が見られることから、納税者の予見可能性を確保するべく、相続税法の時価評価のもと、適正化を検討する方針が示されています。
 与党は12月中旬に2023年度税制改正大綱を決定しました。かねてより予想されていた110万円贈与の持ち戻し期間の延長が盛り込まれた一方で、持ち戻しの対象にならない新たな生前贈与の非課税枠が設けられるなど、資産家の相続対策に大きな影響を及ぼす見直しが並んでいます。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)
 

 

2023年02月07日

税制改正大綱が決定 提供:エヌピー通信社


 与党は12月中旬に2023年度税制改正大綱を決定しました。かねてより予想されていた110万円贈与の持ち戻し期間の延長が盛り込まれた一方で、持ち戻しの対象にならない新たな生前贈与の非課税枠が設けられるなど、資産家の相続対策に大きな影響を及ぼす見直しが並んでいます。

 生前贈与に関わる見直しで目を引くのが、相続時精算課税の大幅な拡充。これまでは同制度を適用すると110万円未満の贈与もすべて申告が必要で煩雑だったところを、110万円未満の新たな非課税枠を導入。しかも相続直前の贈与でも持ち戻しの対象にならないことから、従来の年間110万円までの暦年贈与に代わって相続税対策の新たな定番となる可能性があります。

 また中小企業の節税策として活用されていたコインランドリー節税が規制されます。利益が多く出た年にコインランドリーを多数取得し、専門の業者に運営を委託したうえで、設備投資減税を駆使して税負担を抑えるというものですが、大綱では中業企業投資促進税制や中小企業経営強化税制といった法人税の優遇制度から軒並み除外されました。

 10月にスタートするインボイス制度に向けては、免税事業者から課税事業者に転じた際に3年間税負担を軽減する特例や、1万円未満の少額取引を当面インボイス不要にする救済措置が導入されます。またインボイス制度のスタートに合わせて登録事業者となるための申請期限は3月末ですが、中小事業者の対応が進んでいない現状を受けて、4月以降の申請にも柔軟に対応する旨が盛り込まれました。

 現在は2年間の宥恕措置が認められている改正電帳法についても、宥恕措置の終了後もデータで受け取った領収書などの紙保存が認められることとなりました。大綱の内容は通常国会での議論を経て3月末に成立する見通しです。

<情報提供:エヌピー通信社>
 

 

2023年01月24日

タワマン節税が法規制へ 提供:エヌピー通信社


 タワマン高層階の実勢価格と相続税路線価のかい離を利用した「タワマン節税」について、政府・与党は相続税評価額の算定ルールを改める方針を固めました。24年度以降の改正を目指しています。タワマン節税を巡っては2022年4月、実勢価格14億円のマンションを0円で申告した納税者に対して追徴課税した国税当局の処分の妥当性が争われ、国税側の主張を認める最高裁判決が下されています。

 マンションは階数が変わったとしても住戸面積が同じなら固定資産としての評価額は変わりません。その一方で、実売価格は眺望のよい上階になればなるほど高くなるため、高層階ほど実勢価格と評価額の開きが大きくなる傾向があります。例えば同じマンションのなかでも、1階住戸の実勢価格が5千万円、同じ広さの30階の住戸が1億円で、相続税評価額はいずれも2千万円とすると、実勢価格に対する評価額の割合は1階住戸なら40%、30階住戸なら20%という差が生まれます。数十階にもなるタワーマンションであれば、低層階と高層階の価格の開きが1億円以上になることも珍しくないため、節税効果もその分大きくなります。これを利用して、相続を見込んでタワーマンションの高層階を購入しておき、相続税を納めた直後に高額で売却するのが「タワマン節税」です。

 22年4月に最高裁判決が下された裁判では、2棟のタワーマンションを計14億円ほどで購入した納税者が、相続税評価額によって価額を3億円ほどまで引き下げ、さらに購入に当たっての借入金を債務として差し引いて2棟のマンションを0円として申告していました。最終的に追徴課税処分を行った当局側が勝訴したものの、あくまで合法の範囲内で行った相続税対策に対して後出しで追徴課税を行うのは横暴との反発の声も出ていました。

 そこで政府・与党は、相続税評価額のルールそのものの見直しに着手することを決めました。自民党税制調査会の会合では、国税庁からタワマン節税規制の必要性が示され、23年に不動産鑑定士や学者らで構成する有識者会議を設置することを決定。具体策を詰め、評価方法を定める財産評価基本通達の改正を行います

<情報提供:エヌピー通信社>

 

 

2023年01月14日

税法と民法で異なる「持ち戻し」 提供:エヌピー通信社


 年末に決定する2023年度税制改正大綱に向けて、生前贈与の「持ち戻し」の期間を現行制度の3年から延長する案が浮上しています。持ち戻しとは、相続発生までの3年間に行われた生前贈与について、贈与ではなく相続によって得た財産として扱い、相続税を課すルールのこと。死期を悟ってからの駆け込み贈与による税負担の圧縮を防ぐために設けられています。

 覚えておきたいのは、この3年持ち戻しルールは、あくまで税法上の規定だということ。というのは、民法にも持ち戻しルールが存在するからです。
 民法の持ち戻しとは、特定の法定相続人への生前贈与があった時に、「遺産の前渡し」があったとしてその分を遺産に合算して遺産分割や遺留分の算定を行うというもの。相続税と似ていますが、こちらは3年ではなく相続発生までの10年間が対象となっています。かつては何十年前の贈与であっても対象とするという恐ろしい制度でしたが、さすがにそれはやり過ぎとの声が多かったためか、2018年に改正された民法によって10年間に短縮された経緯があります。

 なお税法、民法ともに、20年以上連れ添った配偶者への贈与については、持ち戻さなくてもよいとする優遇制度が設けられています。税法には以前からあったルールですが、民法では18年の民法改正時に、持ち戻し期間の短縮に併せて導入されました。

<情報提供:エヌピー通信社>

 

 

2022年12月05日

《コラム》原野の相続


 遺産の中から原野の土地が見つかったとき、その原野は、1970年代から1980年代に宅地として分譲されたものの、開発されないまま、放置された土地かもしれません。

◆土地の所在を確認する
 まずは、土地の売買契約書、登記簿謄本などをもとに、土地の所在を確認します。WEBで地図検索すれば、当該地を含む、近隣の場所を特定できます。近隣の建物の地番が手掛かりになります。

◆権利関係を確認する
 最新の登記簿謄本を取得し直し、所有権が被相続人となっているか、私道の共有持分は、誰が所有しているかを確認します。分譲から40年以上経過している土地であれば、所有者の多くに相続が発生し、相続登記されていないことも想定されます。

◆現地を確認する
 公図や測量図があれば、現況を確認します。長く放置されていた土地の場合、木々や草が生い茂っていて、目視での確認は困難かもしれません。少なくとも、近隣の建物や道路との位置関係からあたりをつけて、土地の形状、がけ地の有無などを把握できれば、不安も和らぐかもしれません。役所に現況を問い合わせてみるのも一法です。

◆原野の相続人を決める
 財産価値のない土地の相続であったとしても、令和6年4月から3年以内の相続登記申請が義務付けられますので、相続人を決めなければなりません。他に金融資産や土地など相続財産がある場合は、原野だけ相続放棄はできないので、遺産分割協議で原野の相続人を決めることが必要です。
 なお、倍率方式が適用される純原野などの財産評価は、固定資産税評価額に評価倍率を乗じて算出します。

◆相続土地国庫帰属制度の利用に備える
 令和5年4月から、相続又は遺贈により取得した土地を国が買い取る相続土地国庫帰属制度がスタートします。法務省のサイトに公開された制度概要によると、建物がないこと、土壌汚染や埋設物のある土地でないこと、担保権等が設定されていないこと、がけ地でないこと、隣地と境界に争いがないこと、管理費用を負担することなど、一定の要件に該当する場合、原野でも国に買い取ってもらえる可能性があります。
 具体的な取扱いは、これから決まるようですが、まずは相続登記を行い、将来の制度利用に備えることから始めましょう。


(情報提供 ゆりかご倶楽部) 

 
2022年11月30日

国税庁、税務行政のDXに本腰 提供:エヌピー通信社


 2023年度に向けた機構・定員要求と予算の概算請求の内容を国税庁が明らかにしました。新たな国際課税ルールへの対応などのため約1200人の増員を要求したことに加え、AI活用や調査のデジタル化などのDX(デジタル・トランスフォーメーション)に当たる新部署の設置を求めました。

 人員と機構を要求する上で国税が重視した項目は、「税務行政のデジタル化への対応」、「新たな国際課税ルールへの対応」、「消費税不正還付や国際的な租税回避等への対応」、「日本産酒類の振興への対応」、「業務センター室拡充への対応」。国税庁は昨年に『税務行政のデジタル・トランスフォーメーション――税務行政の将来像2.0――』という資料を公表していて、課税・徴収の様々な面にデジタル手法を取り入れることで効率化や高度化を図っていく方針を示しています。国税庁はこうした税務行政のデジタル化に向けて1192人の増員要求をする一方で、定員合理化目標数として1141人を掲げているため、純増要求数は51人となりました。

 機構要求の内訳を見ると、税務行政のデジタル化への対応として東京国税局に「情報システム部(仮称)」の新部署を置くのに加え、国税庁にも審議官を置いてDXの推進に当たる構えです。

 またDXと並んで重視する新たな国際課税ルールへの対応として、国税庁に国際企画官と課長補佐を置きます。さらに国際的な租税回避に対応するため、庁・局・税務署に課長補佐や情報技術専門官、国際税務専門官、査察機動専門官などの専担ポストを増員して当たる構えを明らかにしています。

 23年度の予算に向けた概算請求では、前年比104.8%となる6555億4千万円を求めました。内訳をみると、納税者利便向上経費は29億8800万円で前年度から15%近く増えています。また国際化対策費も1割弱増えたほか、酒類業振興事業経費が前年比6割増と伸びています。

<情報提供:エヌピー通信社>

 

2022年10月05日

《コラム》今年の改正税法 相続登記義務化と登録免許税

 
◆不動産登記法の改正で相続登記義務化
 令和6年4月1日以降になると、不動産登記法の改正(令和3年4月28日公布)により、相続や遺贈により不動産を取得した相続人にとって、相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられることになりました。相続登記の義務化は、施行日前に相続の開始があったものについても、遡って適用されます。義務違反は10万円以下の過料の対象です。

◆「相続人申告登記」の新設
 3年以内に遺産分割が成立しない場合には、相続人が、登記官に対して、所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、自らが相続人である旨を、相続登記の申請義務履行期間内(3年以内)に各人が申し出ることで、相続登記の申請義務は履行したものとみなされ、申し出を受けた登記官は職権登記を行います。これを「相続人申告登記」と言い、この場合の登録免許税は、職権登記の非課税の規定の適用と措置されます。
 ただし、この相続人申告登記では、持分割合の記載はなく、仮の報告を記載したものとの扱いなので、所有権主張の根拠にはなりません。また、遺産分割成立から3年以内に遺産分割の内容を踏まえた所有権移転登記の申請をすることも義務とされました。

◆今年の登録免許税法の改正
 なお、次の非課税措置も見直されています。
①相続により土地の所有権を取得した個人が相続登記をする前に死亡したときの当該死亡者を当該土地の所有権の登記名義人とするためにする登記の登録免許税(これは適用期限延長の見直し)
②不動産の価額が100万円以下の土地であるときの相続による所有権移転登記又は表題部所有者の相続人が受ける所有権保存登記についての登録免許税(この見直しは令和4年4月1日以後の登記から適用)

◆所有者不明土地関連はこれから
 なお、来年以降に施行とされている所有者不明土地関連の民法・不動産登記法・相続土地国庫帰属法の改正・創設に伴う新たな税制が、来年以降、目白押しで現れて来ると思われます。

 

(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2022年07月13日

タワマン節税訴訟で「伝家の宝刀」にお墨付き 提供:エヌピー通信社

 タワマン節税の是非を巡って納税者と国税当局が争った裁判で、最高裁は国税当局の言い分を全面的に認める判決を下しました。税法上は合法であっても当局が「税逃れ」とみなせば否認できる、いわゆる「総則6項」の明確な適用基準は示されず、今後は当局がより幅広い事案で総則6項を利用する可能性も否定できません。

 裁判で争われたのは、原告が相続で取得した高層マンションの相続税評価額の正当性。故人は2棟のマンションを計14億円ほどで購入しましたが、高層階の実勢価格が反映されない相続税路線価では2棟の評価額は約3億円ほどでした。相続人が路線価に従い申告をしたところ、当局が「路線価による評価は適当ではない」として否認し、約3億円を追徴課税した事例です。こうした実勢価格と路線価のかい離を利用した節税策は「タワマン節税」と呼ばれ、多くの富裕層が相続税対策に活用してきましたが、近年では当局は積極的にこれらの税務処理を否認し、追徴課税を行っています。

 このとき当局が否認の根拠として使うのが、相続税の財産評価のルールを定めた財産評価基本通達の総則の第6項、いわゆる「総則6項」です。同項では、通達によって評価することが「著しく不適当」と認定できるケースに限り、「国税庁長官の指示を受けて評価する」と規定。評価ルール全体における例外規定とも呼べる内容で、この項目を適用すれば最終的には国税側の「言い値」が適用されることになります。「総則6項は伝家の宝刀」と言われるゆえんです。

 判決で裁判長は、「路線価などによる画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反する事情がある場合は(例外規定を用いる)合理的な理由がある」と判断。その上で、今回の事例では相続税の負担軽減を意図して不動産の購入や資金の借り入れが行われ、実際に相続税額がゼロになったことなどを指摘しました。「他の納税者との間に看過しがたい不均衡が生じ、租税負担の公平に反する」として、例外規定の適用を認めたことになります。当局の言い分を全面的に認めた二審判決をそのまま支持したかたちです。

 判決を受け、原告代理人の弁護士らは司法記者クラブで記者会見し、「最高裁が(総則6項適用の)基準を明示してくれることを期待したが、今回の判決は基準を定義したとは言えない。判決が確定したことで納税者が納税額を予見できないという問題が解決されないだけでなく、国税による恣意的な課税にブレーキがかからなくなる」と語っています。

<情報提供:エヌピー通信社>

 

2022年06月13日

(後編)相続財産から控除できる債務や葬式費用とは

 
(前編からのつづき)

 ただし、被相続人が生前に購入したお墓の未払代金など非課税財産に関する債務は、遺産総額から差し引くことはできません。

 なお、債務などを差し引くことのできる人は、
①相続や遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ、被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除く)
②相続や遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所がない一定の条件に該当する人で、その債務などを負担することになる相続人や包括受遺者(相続時精算課税の適用を受ける贈与により財産をもらった人を含む)をいいます。

 上記②は、(イ)日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがある人、(ロ)日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人(被相続人が、一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除く)、(ハ)日本国籍を有していない人(被相続人が、一時居住被相続人、非居住被相続人又は非居住外国人である場合を除く)のいずれかに該当する人をいいますので、あわせてご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和4年3月7日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。



(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2022年04月20日

(前編)相続財産から控除できる債務や葬式費用とは

 
 相続税を計算する場合、被相続人が残した借入金や税金などの債務を遺産総額(相続時精算課税の適用を受ける贈与財産がある場合には、その価額を加算)から差し引くことができます。

 債務とは、相続開始日時点(原則、被相続人が死亡したとき)に現存するもので、債務であることが確定しているものをいい、債務控除には債務や葬式費用があります。
 債務のうち税金については、被相続人に課される税金で、被相続人の死亡後相続人などが納付又は徴収されることになった所得税などの税金については、被相続人が死亡したときに確定していないものであっても、債務として遺産総額から差し引くことができますが、相続人などの責任に基づくものや、徴収されることになった延滞税や加算税などは遺産総額から差し引くことはできません。

 葬式費用は、被相続人が亡くなった時点で発生していませんが、相続が発生すると通常発生する必要であり、被相続人の財産から支払われるのが一般的なため、債務と同様に相続税を計算するときは遺産総額から差し引くことができます。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和4年3月7日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2022年04月20日

《コラム》子供のない夫婦の相続

 子供のない夫婦が将来起きる相続を考えるとき、誰に自分の財産を託したいか、遺言書で自らの意思をはっきり残しておくことが大切です。

◆相続人の範囲
 遺言書がなく、遺産分割協議もできない場合、財産は、相続人に法定相続分で引き継がれます。被相続人の配偶者は常に相続人となりますが、被相続人の外に血族がいるときは、被相続人の子供(第1順位)、被相続人の父母など直系尊属(第2順位)、被相続人の兄弟姉妹(第3順位)の順で、それぞれが配偶者とともに相続人となります。

◆甥、姪への予期せぬ相続
 被相続人に子がなく、両親も他界、兄弟姉妹も既に死亡しているときは、兄弟姉妹の子(被相続人にとっては、自身の甥、姪)が代襲相続人として相続することになります。兄弟姉妹との間で、生前、仲たがいしていた場合、甥、姪にとって思いもかけない財産が舞い降り、お互い想定していなかった財産移転が起きることもあります。

◆遺言書で財産の引継ぎ先を指定する
 このような意図しない相続が行われないようにするためには、遺言書を作成しておくことで、財産を引き継がせたい人に渡すことができます。兄弟姉妹がいる場合でも、遺言書があれば配偶者に100%財産を渡すことができます。遺留分は兄弟姉妹にはありません。ただし、夫婦のどちらが先に亡くなるかは分からないため、夫婦それぞれで自分の財産を相手に渡す遺言書を作成しておく必要があります。

◆自分の人生の総括を
 配偶者の外に財産を移転させたい場合には、公益団体等に寄附して社会貢献する遺贈寄附という方法もあります。遺言書を利用して自分の人生を総括し、自身の財産を承継してほしい人や団体に財産を移転することは、意義があるかもしれません。
 遺言書には、公正証書遺言と自筆証書遺言の2つの方法があります。前者は公証人役場で公証人が立ち会って遺言書を作成してもらう方法。後者は自書で遺言書を作成する方法。令和2年7月から自筆証書遺言書を法務局に保管してもらうことも可能になりました。瑕疵のない遺言書を確実に作成したい場合は公正証書遺言とし、自身の意思を伝えることが主な目的であれば、自筆証書遺言で良いかもしれません。自身に合った方法を選択してはいかがでしょうか。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2022年04月12日

生産緑地問題、宅地流入は2割 提供:エヌピー通信社

 都市部の農地への税優遇が期限切れを迎えることで生じる「2022年問題」について、生産緑地指定を解除する土地は2割程度にとどまる見通しです。

 都市の農地のなかでも市街化区域にある一定規模以上の土地は、農業を続けることを前提に、「生産緑地」として30年間、固定資産税や相続税の納税が猶予されます。現在、生産緑地は全国に約1万3千ヘクタールあり、このうち制度がスタートした1992年に指定を受けた土地が約8割を占めます。つまり約1万ヘクタールの都市部の農地は2022年に期限切れを迎えるため、土地オーナーは生産緑地の指定を引き続き受けるか、はたまた宅地などに転用するため指定解除を受けるかの決断を迫られていました。

 オーナーを悩ませるのは、生産緑地指定を受けると税優遇を受けられる反面、原則として農作物の生産以外の用途で土地を使うことはできず、売却も禁じられている点。そのため期限が切れる22年に多くの都市農家が制約を嫌って指定解除に踏み切り、それらが一斉に不動産市場に流れ込む可能性がかねてより指摘されてきました。それによる不動産価格の下落リスクが「2022年問題」と呼ばれるものです。

 しかし日本経済新聞の調査によれば、期限切れを迎える生産緑地について昨年11月末時点で、「生産緑地指定を延長する」と答えた割合は首都圏の20市区で85%(面積ベース)でした。

 当初懸念されていたほどの宅地流入が起きなかった理由としては、近年に成立した新たなルールがあります。生産緑地の指定期間が30年から10年に短縮されたほか、それまで農業に必要な施設しか建てられなかったところを直売所や農家レストランの設置が認められました。さらに他の農家や市民農園を経営する企業に直接貸し出すことが可能となり、必ずしも自身が営農する必要がなくなりました。こうしたルールが整備されたことで、多くのオーナーが「10年延長」を選択する結果となったようです。

 もっとも8割が生産緑地を延長するとはいえ、残りの2割に当たる約2千ヘクタールが宅地化する可能性があります。そうなれば周辺のアパートの家賃相場や受給バランスに影響を与えることを踏まえ、不動産の活用法を改めて見直す必要が出てきそうです。

<情報提供:エヌピー通信社>

 
2022年03月04日

《コラム》生命保険金の相続税申告

 生命保険金は、相続に際して節税商品や納税資金として利用されますが、うっかりして相続税の申告が必要なことに気付かないまま、税務調査で申告漏れを指摘される事例が今年に入って増えています。多くは納税者の誤解や失念、税理士への事前説明が漏れたことによるものですが、税務署に隠蔽仮装と指摘されて思わぬ税負担を求められることがあるので注意が必要です。

◆生命保険金は相続財産ではない
 生命保険金は相続によって被相続人から承継されるものではなく、保険金受取人の固有の財産であるため、遺産分割の対象とはなりません。また、被相続人が生前、相続人に贈与した生計の資本、養子縁組や婚姻のための贈与(特別受益)にも該当しないため、生命保険金は相続税の申告対象にはならないと思うかもしれません。

◆相続税では相続財産とみなして課税される
 しかし、相続税では被相続人が保険料を負担した生命保険金も申告対象となります。民法上の相続財産ではありませんが、経済実質的には、被相続人の死亡によって財産を取得するので、相続財産又は遺贈財産とみなして相続税が課税されます。その際、法定相続人1人当たり500万円の非課税措置があるので、限度額を超える部分のみの課税で済みますが、申告が必要なことに変わりはありません。
 なお、生命保険金は特定の相続人だけが取得するので遺産分割で考慮すべきか気になるところですが、判例には保険金の額、遺産総額に対する比率、同居の有無、被相続人に対する介護の度合い、各相続人の生活実態などの諸事情を総合考慮して相続人の間で不公平が是認できないほどに著しい特段の事情がある場合は、特別受益に準じて持戻しの対象と解するのが相当であると判示したものがあります。

◆申告漏れとならないように
 税務調査で生命保険金の申告漏れが判明した場合、不足税額に加え、延滞税(納付遅延期間の利子に相当)や過少申告加算税(10%又は15%)が課されます。また申告漏れが隠蔽仮装であると認定された場合は、過少申告加算税に代えて重加算税(35%又は45%)が課され、税負担がさらに重くなります。相続人に生命保険金を受け取る人がいるときは、必ず契約内容を見て課税上の取扱いの確認を受け、申告漏れとならないようにしましょう。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)


 
2021年11月20日

基準地価が2年連続下落 提供:エヌピー通信社


 全国の平均地価が2年連続の下落となったことが基準地価の公表で明らかになりました。もっとも住宅地などでは下落幅は縮小し、大幅な伸びを示したエリアもあります。

 国土交通省が公表した基準地価は、今年7月1日時点での全国の土地の価格を都道府県が調査し、公表したもの。最新の基準地価は、住宅地や商業地など全用途の全国平均は前年比で0.4%下がり、コロナ禍の影響を受けた前年に引き続き、2年連続で下落しました。

 ただ詳しく見てみると、地域や用途によって地価傾向は異なっていることが分かります。例えば東京、大阪、名古屋の三大都市圏の商業地をみると、東京圏が小幅ながらも上昇を維持、名古屋圏がマイナスからプラスに2.0ポイント改善したのとは対象的に、大阪圏だけが唯一、マイナス0.6%と下落していることが分かります。

 インバウンド需要で近年大きく地価を上げてきた大阪の商業地が下落するのは、2012年以来9年ぶりのこと。どこよりもインバウンドの恩恵を受けてきた大阪は、繁華街の中心であるミナミの地点が商業地の下落率ワースト2、3となるなど、コロナ禍によってインバウンドが消滅した今、他地域に増して厳しい状況に置かれています。

 コロナ禍でも堅調な伸びを示しているのが、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の、いわゆる「札仙広福」と呼ばれる地方中核4都市。住宅地では前年を超える4.2%、商業地でも前年ほどではないものの4.6%と、三大都市圏を大きく上回る伸びを見せています。例えば札幌市は、鉄道駅徒歩圏の利便性が高い地域を中心とした需要の堅調さなどを受け、住宅地が7.4%上昇、福岡市の商業地では7.7%上昇などと目立った上昇を示しています。

 全用途での地価上昇ベスト10を見ると、最も地価が高騰したのは沖縄県豊見城市9-1の地点。同地点は工業地ですが、国道の拡充を機に那覇市街や那覇空港へのアクセスが向上した結果、物流拠点としての需要が高まり、3割近い急騰をみせました。

<情報提供:エヌピー通信社>
 

2021年11月19日

《コラム》相続で所有者不明土地にしないために


 高齢化で相続が増加する中、利用されない土地が増えると、所有者が判明しない、又は連絡がつかない所有者不明土地が生じます。今年4月、これらの解消を目的とした民事基本法制の見直しが行われました。

1.不動産登記制度の見直し
 相続登記が義務化され、不動産を相続により取得した者は、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しないと10万円以下の過料が徴収されます。一方、相続登記はこれまで、登記義務者が共同して申請しなければなりませんでしたが、新たに相続人が自らを登記名義人の法定相続人であることを申し出れば、単独で登記申請できる「相続人申告登記」※が新設され、登記申請義務を履行したものとみなされます。また、令和4年の税制改正では、相続人の登録免許税の負担軽減措置が図られる見込みです。(※所有権の移転登記ではなく、報告的な登記とされます)

2.相続土地国庫帰属制度の創設
 相続した土地を国が買い取る制度も新設されました。相続人にとっては朗報ですが、国は、安易な買取りを防ぐ観点から様々な条件をつけてハードルを高くしています。建物は相続人が取り壊して更地にすることや、土壌汚染や埋設物のある土地、崖地、担保権の設定された土地、通路に利用される土地、境界に争いのある土地などは、買取りの対象からはずされ、買い取る場合でも10年分の管理費用を国に支払うことが条件となるなど利用し難さが指摘されています。

3.土地利用に関連する民法の見直し
 民法も新制度の後押しをします。遺産分割協議の長期未了状態を解消するため、相続開始から10年経過したときは、特別受益者の相続分や寄与分によらず、画一的な法定相続分で遺産分割することとなりました。
 また所有者不明土地の利活用を促進する観点から新たな管理制度が創設され、選任された管理人が当該土地の管理や売却をできるようにしたほか、所有者不明土地を電気・ガス・水道などライフラインの確保に利用できるようになりました。

◆相続で所有者不明土地にしないために
 親世帯と同居することが少なくなり、相続が起きると土地や建物の利用目的が失われ、維持コストの負担も重くなります。行き場のない不動産としないためにも親の世代が将来の活用や処分に責任をもって臨むことが必要な時代になったと言えそうです。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2021年11月19日

相続財産の上場株式等を調べる方法


 相続が発生した場合に、相続財産に何があるのか相続人が把握するのが困難であるケースがあります。遺言書や終活ノート等がある場合は把握しやすいのですが、被相続人が生前子供たちと離れて一人暮らしであった場合も今後増加してくるものと予想され、相続財産把握困難なケースも増えてくるものと思われます。



今回は相続財産(税務上)の上場株式等(内国上場株式、上場投資信託受益権(ETF)など)を保護預かりしてもらっている証券会社等(証券会社、信託銀行など)を調べる方法として、株式会社 証券保管振替機構の「登録済加入者情報の開示請求」について簡単にとりあげます。



「登録済加入者情報の開示請求」は株式会社 証券保管振替機構を通じて、被相続人が上場株式等を保護預かりしてもらっている証券会社等がどこなのかを相続人等の照会により調べてもらう(有料です)制度です。

それにより判明した証券会社等に上場株式等の残高の情報を照会します。



相続税の申告実務の際は、被相続人の通帳の記録、配当計算書の存在、証券会社等からの郵便物の存在等により保有上場株式等の存在や残高が判明するのですが、それらを通じてもなお判明しない、あるいはそれら自体も紛失等していて把握出来ないケースは「登録済加入者情報の開示請求」を利用して把握するという最後の手段のようなものかと思います。



相続人が困らないよう終活ノートのようなちゃんとした形式まではいかなくとも、財産リストのメモくらいは生前に作っておくことが大事なことかと思います。

2021年11月19日

相続財産の生命保険契約を調べる方法


 相続が発生した場合に、相続財産に何があるのか相続人が把握するのが困難であるケースがあります。遺言書や終活ノート等がある場合は把握しやすいのですが、被相続人が生前子供たちと離れて一人暮らしであった場合も今後増加してくるものと予想され、相続財産把握困難なケースも増えてくるものと思われます。



今回は相続財産(税務上)のなか生命保険契約を調べる方法として、一般社団法人 生命保険協会の「生命保険契約照会制度」について簡単にとりあげます。



「生命保険契約照会制度」は生命保険各社が加盟する一般社団法人 生命保険協会を通じて、被相続人が契約者又は被保険者になっている生命保険契約がどこの保険会社にあるのかを相続人等の照会により調べてもらう(有料です)制度です。

それにより判明した保険会社に具体的な保険契約の情報を照会します。



相続税の申告実務の際は、被相続人の通帳の記録、保険証券の存在、保険会社からの郵便物の存在等により契約の存在や内容が判明するのですが、それらを通じてもなお判明しない、あるいはそれら自体も紛失等していて把握出来ないケースは「生命保険契約照会制度」を利用して把握するという最後の手段のようなものかと思います。



相続人が困らないよう終活ノートのようなちゃんとした形式まではいかなくとも、財産リストのメモくらいは生前に作っておくことが大事なことかと思います。


 

2021年11月19日

《コラム》免税駐車場事業者のインボイス対応


 令和5年10月1日に導入される消費税インボイス制度(適格請求書等保存方式)。今年(令和3年)10月1日からインボイス発行事業者登録申請書の受付が始まります。消費税の免税駐車場事業者の対処方法は?

◆免税事業者への影響
 課税事業者は、仕入先からインボイス(適格請求書)の交付を受けて仕入税額控除を行います。一方、免税事業者はインボイスを交付できないため、相手先は仕入税額控除できず(6年間は経過措置あり)、契約が打ち切られるかもしれません。
 駐車場オーナーは、免税事業者のまま益税となっていた消費税分の値引きに応じるか、又は課税事業者を選択して登録事業者になるかの検討をすることになります。

◆登録事業者になる選択
 課税事業者を選択し、あわせて簡易課税を選択した場合、不動産業のみなし仕入率40%が実際の仕入率より高ければ益税部分の一部は手許に残ります。また多額の設備投資を予定する場合は、原則課税を選択して消費税の還付を受けることもできます。
 なお、毎月、振替や振込で賃料が支払われる場合、都度インボイスを交付する必要はなく、登録番号の記載された賃貸借契約書を保管し、預金通帳で支払記録を確認できれば仕入税額控除できるとされています。

◆登録申請は令和5年3月31日までに!
 令和5年10月1日よりインボイス発行事業者となるためには、原則として令和5年3月31日までに登録申請が必要です。なお、令和5年10月1日の属する課税期間中に登録を受ける場合は、消費税課税事業者選択届出書を提出する必要はなく、さらに簡易課税を併せて選択する場合は、令和5年10月1日の属する課税期間の末日までに簡易課税制度選択届出書を提出すれば、令和5年9月30日までは免税事業者、令和5年10月1日からは簡易課税事業者となれます。

◆免税事業者にとどまる選択
 借主が個人消費者の場合、仕入税額控除の必要はないため、インボイスを交付せず免税事業者にとどまることでも問題はないものと思われます。消費税は表立って請求できなくなりますが、令和3年4月1日から再開された総額表示のもとでは、賃料は消費税を含む総額で表示されるため、立地や広さで周辺の駐車場と比べ競争力があれば、従前の税込賃料と同様の水準で料金設定することもできるのではないでしょうか。

 

(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2021年06月11日

公示地価、6年ぶりのマイナス 提供:エヌピー通信社

 国土交通省は、今年1月1日時点での地価を公表しました。昨年初頭からの新型コロナウイルスの感染拡大が影響し、住宅地、商業地、工業地などを含む全用途の全国平均はマイナス0.5%と、6年ぶりにマイナスに転じました。これまで安倍政権下の株高傾向、訪日海外観光客の増加、東京五輪に向けた大規模再開発などにけん引されてきた地価の上昇傾向が、すべて吹き飛んだ形です。

 住宅地では、コロナ禍による雇用環境の悪化から、住宅の購入に慎重な姿勢が強まりました。前年0.8%プラスだったところが、0.4%の下落と5年ぶりにマイナスとなりました。上昇を保った札幌、仙台、広島、福岡の地方中枢4都市を除き、三大都市圏などでも軒並み下落。ただし都心の高級物件のあるエリアや、交通の便の良い郊外など一部は上昇を保っています。

 コロナ禍が最も影響したのが商業地です。訪日客がほぼゼロになったことに加え、国内でも外出自粛の動きにより旅行や外食が打撃を受け、観光地や繁華街などで下落が目立ちます。商業地は7年ぶりのマイナスとなる0.8%下落。特に訪日客に人気の高かった大阪中心部の繁華街「ミナミ」は全国の下落率トップ10のうち8地点を占め、深刻な状況です。昨年9月に100年の歴史を閉じた老舗ふぐ料理店「づぼらや」がある大阪市中央区道頓堀1丁目は、前年の24%上昇から、一気に28%の下落に落ち込みました。

 一方、上昇幅は縮小したものの、用途別で唯一プラスを維持したのが工業地です。コロナ禍における〝巣ごもり〟傾向がインターネット通販の利用拡大を促した結果、物流施設用地の需要が高まり、全国で0.8%の上昇となりました。地価が最も高かったのは、15年連続で東京都中央区銀座の山野楽器本店。しかし5360万円で前年からは410万円下落し、9年ぶりにマイナスに転じています。

<情報提供:エヌピー通信社>

 

2021年05月12日

《コラム》押印不要の書類が増えています


 菅内閣は脱ハンコ、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を進めています。これに伴い、税務書類についても押印が不要となる書類が増えてきました。

◆税務署窓口における押印の取扱い
 令和2年12月21日に「令和3年度税制改正の大綱」が閣議決定され、この中で、税務関係書類(国税に関する法律に基づき税務署長等に提出される申告書等)の押印の見直しが行われました。提出者等の押印をしなければならないこととされている税務関係書類について、一部の税務関係書類を除き、押印を要しないこととする方針が示されました。そして、この取扱いは原則として令和3年4月1日以後に提出する税務関係書類について適用する予定となっていましたが、一方で「改正の趣旨を踏まえ、押印を要しないこととする税務関係書類については、施行日前においても、運用上、押印がなくとも改めて求めない」ともされていました。
 この閣議決定に基づき、全国の税務署窓口においては、本件見直しの対象となる税務関係書類について押印がなくとも改めて求めないこととしています。 

◆振替納税やダイレクト納付の手続も
 従来、振替納税やダイレクト納付をしようとする場合には、それぞれ「振替依頼書」や「ダイレクト納付利用届出書」に金融機関の届出印を押印する必要がありました。これらの手続も令和3年1月から、個人の方の振替依頼書及びダイレクト納付利用届出書をe-Taxで提出することが可能となりました。
 さらに、振替依頼書等のオンライン提出においては、金融機関の外部サイトにより利用者認証を行うので、電子送信時に電子署名及び電子証明書の添付も不要となります。

◆押印が必要な書類も
 とはいえ、担保提供関係書類・物納手続関係書類の一部や遺産分割協議書、特定個人情報の開示請求、閲覧申請手続など、押印が必要な書類もまだまだありますので注意しましょう。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)  

 

2021年04月20日

《コラム》 解明待ちの「土地の上に存する権利」

◆小規模宅地特例と配偶者敷地利用権
 相続税に於ける小規模宅地特例は、「土地又は土地の上に存する権利」について適用されるとしているので、配偶者居住権に基づく敷地利用権が「土地の上に存する権利」に該当しなかったら、小規模居住用宅地特例の対象にはなりません。

◆昨年、令和元年度政令改正
 昨年は、租税特別措置法では配偶者居住権について特別な改正をしていません。それにも拘わらず、配偶者居住権に基づく敷地利用権は小規模居住用宅地に当然に該当すると考えられたらしく、その計算規定が政令に、新規挿入されています。
 法改正なしでの政令規定新設の理由が財務省「税制改正の解説」で確認できます。すなわち、配偶者居住権は、借家権類似の建物についての権利であるが、配偶者居住権に付随するその目的となっている建物の敷地を利用する権利(敷地利用権)については、当然に「土地の上に存する権利」に該当すると理解されるから、ということのようでした。

◆今年の、令和2年度税制改正の解説
 ところが、同じ、財務省「税制改正の解説」の今年度版(9月11日公開)には、対価を伴う配偶者居住権の消滅には譲渡と同じ効果がある、所得としては総合課税の譲渡所得と考えられる、配偶者敷地利用権は「土地の上に存する権利」には該当しない、と書かれています。
 配偶者敷地利用権は、土地に関係する権利ではあるが、鉱業権・温泉利用権・借家権の仲間であり、「土地の上に存する権利」と言われる借地権の仲間ではない、ということです。
 昨年と今年で明らかに相違しており、この相違に問題が無い、との解説は今のところ出ていません。

◆土地の上に存する権利と相続税・所得税
 昨年の「税制改正の解説」での配偶者敷地利用権は相続税の改正の項目に関するものでした。今年の「税制改正の解説」での配偶者敷地利用権は所得税の改正の項目に関するものでした。
 相続税では、配偶者敷地利用権は土地の上に存する権利に該当するとされ、所得税では扱いが異なり、土地の上に存する権利には該当しない、とされたことについて、誰しもが疑問としているところなので、解明が待たれるところです。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)  

 

2020年11月12日

《コラム》令和2年分から適用開始 所得金額調整控除に注意


 令和2年分から適用される所得税の改正項目は多岐にわたり、基礎控除・寡婦控除・給与所得控除・公的年金等控除・青色申告特別控除の改正や、ひとり親控除・所得金額調整控除の創設などがあります。このうち所得金額調整控除は、新たに創設された制度で適用が想定されるケースも多そうです。今年の年末調整で戸惑わないよう注意しましょう。

◆所得金額調整控除
 所得金額調整控除には、以下の二種類の控除があります。
(1)子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除
【適用対象者】 その年の給与等の収入金額が850万円を超える給与所得者で、かつ、①本人が特別障害者に該当する者、②年齢23歳未満の扶養親族を有する者、又は③特別障害者である同一生計配偶者・扶養親族を有する者
【所得金額調整控除額】 {給与等の収入金額(1,000万円超の場合は1,000万円) - 850万円}×10%
(2)給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除
【適用対象者】 給与等の金額と公的年金等に係る雑所得の金額がある給与所得者で、その控除後の合計額が10万円を超える者
【所得金額調整控除額】 {給与所得控除後の給与等の金額(10万円超の場合は10万円) + 公的年金等に係る雑所得の金額(10万円超の場合は10万円)}-10万円

◆注意点
 年末調整で適用できるのは(1)の制度ですが、この制度については以下の注意が必要です。
①「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出とは別に「所得金額調整控除申告書」の提出が必要となります。
②共働きの場合、扶養親族が一人であっても要件を満たせば、夫婦の双方で適用することも可能となります。
 共働き世帯で扶養控除の適用を受ける場合は、いずれか一の者の扶養親族にのみ該当するものとみなされますが、この制度ではそのような取り扱いはありません。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)  

 

2020年11月02日

《コラム》令和2年7月から開始 自筆証書遺言書保管制度

法務局が自筆証書遺言書を保管してくれるサービスが令和2年7月10日から開始しました。

◆公正証書遺言と自筆証書遺言
 公正証書遺言は、遺言者が公証人に内容を伝えて、その内容をもとに公証人が公正証書として遺言書を作成します。2名以上の証人が立ち会う必要もあります。費用や手間がかかりますが、公証人が内容の法的有効性をチェックしてくれたり、原本を公証役場で厳重に保管してもらえたりするメリットがあります。
 自筆証書遺言は、遺言者本人が遺言書を自書することにより作成します。一人で手軽に作成することができ、費用もかかりません。ただし、相続開始後に家庭裁判所の検認が必要となります。また、遺言者本人の死亡後、遺言書の紛失等により相続人等に発見されなかったり、一部の相続人等により隠匿や改ざんが行われたりするリスクもあります。

◆自筆証書遺言書保管制度のメリット
 この制度を利用して、自筆証書遺言書を法務局に保管してもらうことにより、遺言書の紛失・隠匿・改ざんといったリスクを回避することができ、あわせて家庭裁判所の検認も不要となります。
 遺言者は、法務局に遺言書を預けた後も、預けた遺言書を閲覧したり、保管の申請を撤回したりすることができます。
 また、相続人等は相続が開始した後であれば、遺言書が預けられているかを確認したり、遺言書を閲覧したり、遺言書の内容の証明書を取得したりすることができます。

◆注意点
 法務局に保管してもらう際、法務局の職員の方が自筆証書遺言の方式について外形的な確認はしてくれますが、遺言の内容について相談に応じたり、遺言内容の法的有効性について保証してくれたりするものではありません。また、この制度の手続はそれぞれ各種確認や手続の処理に時間を要するため、全ての手続について法務局に予約が必要となっています。
 この制度を利用する際には、司法書士さんや弁護士さんにも相談されることをお勧めします。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)  

 

2020年10月08日

《コラム》配偶者居住権は譲渡性資産か

◆配偶者居住権への昨年の税制措置
 平成30年の民法改正で創設され本年4月1日から制度がスタートしている配偶者居住権等については、その権利設定期間中の権利放棄や合意解除は可能と解されるものの、民法では、終身性の一身専属権ゆえ「配偶者居住権は、譲渡することができない」と規定されています。
 昨年の税制改正で相続税法に配偶者居住権等の評価規定が定められ、その上で、配偶者居住権等消滅に当たり対価がなければ、贈与課税の対象となる、と通達で明らかにされているところです。

◆配偶者居住権消滅の場合の譲渡所得
 本年改正では、収用や権利消滅で補償金や権利消滅の対価を受け取り、その結果、配偶者居住権等が消滅するときは、譲渡所得の計算をすることになりました。
 収用による配偶者居住権等の権利消滅の直接の相手は収用機関で、権利消滅の対価は譲渡収入とみなすとのみなし譲渡の規定になっています。
 また、収用に限らず、配偶者居住権等の権利消滅一般の場合の規定も作られ、自動的に譲渡所得の計算をするとされ、こちらについてはみなし譲渡の文言はありません。

◆改正税法と民法規定との関係
 みなし譲渡なら、民法の譲渡不可の規定と矛盾しないかもしれませんが、対価のある配偶者居住権の権利消滅につき無条件に譲渡所得計算をする、ということになると、配偶者居住権を譲渡性資産と認定するに等しく、民法との矛盾は明確です。
 その上、収用では、借地権の場合と同じく、配偶者居住権者と所有者の両方が譲渡当事者となることを前提としていますが、税法は、収用以外の譲渡一般でも、そのようなケースが生じることを想定しているのかもしれません。

◆譲渡課税が当然との体制整備は未だ?
 収用による権利消滅が譲渡で、土地建物所有者との合意や放棄による権利消滅も譲渡で、その他収用類似の権利消滅もみな譲渡だとすると、配偶者居住権は自ずと居住用の財産と認識されますので、居住用財産の3000万円控除、軽減税率、買換え特例の適用などについての手当が必要になってくるように思われます。
 これらについて法改正を今年の4月1日以後に向けて何故に用意してないのか、不思議です。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)  

 

2020年07月31日

《コラム》令和2年税制改正大綱 資産課税編

◆所有者不明土地等に係る措置(固定資産税)土地・家屋の固定資産税は、原則として土地の「所有者」(登記簿上の所有者)に課税されますが、昨今の「所有者不明土地等」の増加に伴い、次の措置が設けられます。

(1)「現に所有している者」の申告制度化 市町村長は、その市町村内の土地・家屋について、登記簿に「所有者」として登記がされている個人が死亡している場合には、その土地・家屋を「現に所有している者」(現所有者)に、条例で定めるところにより、賦課徴収に必要な事項を申告させることができることとなりました。

(2)所有者不明土地等の「使用者」に課税 市町村は、調査を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかとならない場合には、その「使用者」を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録し、固定資産税を課することができることとされました。

◆国外財産調書制度等の見直し(相続税等)

(1)相続直後の調書等への記載の柔軟化 相続開始年の年末に有する国外財産に係る国外財産調書については、相続・遺贈により取得した国外財産(相続国外財産)は記載しないで提出できるようになりました。

(2)提出がない場合等の加算税等の見直し 国外財産調書の提出がない場合の過少申告加算税の加重措置の適用対象に、相続国外財産に対する相続税の修正申告等があった場合等が追加されました。 また、国外財産調書に記載すべき国外財産に関する書類の提示・提出がない場合の加算税の軽減措置・加重措置の特例が創設されました。

◆その他の改正(相続税・贈与税)

(1)農地等の納税猶予制度の対象拡大 特例適用農地等の範囲に、三大都市圏の特定市の市街化区域内に所在する農地で、地区計画農地保全条例(仮称)により制限を受ける一定の地区計画の区域内に所在するものが追加されます。

(2)医業継続に係る納税猶予制度の延長 適用期限が3年延長されます。

(3)相続税の物納の特例の対象拡大 適用対象となる登録美術品の範囲に制作者が生存中である美術品のうち一定のものが追加されます


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

 


 

 

2020年02月06日

《コラム》戸籍法改正と相続手続きの円滑化

◆戸籍法の一部改正が成立、公布へ
 令和元年5月24日に戸籍法の一部を改正する法律が成立し、同月31日に公布されました。国民の利便性向上と行政の運営効率化を目的とした今回の改正では、どのようなことが可能になるのでしょうか。

◆戸籍法と戸籍事務の電子化
 私たちの親族的身分関係を証明する「戸籍」、この戸籍の作成や手続き等について定めた法律が「戸籍法」です。平成6年の改正によりコンピュータを使用して戸籍事務を取り扱うこととなり、現在では全国1896市区町村のうち1893市区町村でこのコンピュータ・システムが導入されていますが、各市区町村のシステムがネットワーク化されていないため、私たちが戸籍を請求するためには本籍地の市区町村役場で手続きしなければなりません。
 たとえば相続手続きで、自分と両親や叔父叔母等親族との身分関係を説明する場合、その親族の各本籍地へ戸籍を請求することになります。本籍地と住所地は別の概念であるため、住所地から遠く離れた場所であることもしばしば。遠隔地であれば郵送で請求することになりますが、郵便の往復期間もあり1通請求するのに数週間を要することもあります。相続手続きの際には、何人もの戸籍を請求しなければなりませんので、とても時間がかかります。

◆本籍地以外でも戸籍の取得が可能に
 こうした課題を受け、今回の改正では法務省が一括する戸籍データの管理システムを活用することで、本籍地以外の市区町村役場での戸籍請求が可能になります。また、電子的な戸籍記録事項の証明情報(戸籍電子証明書)の発行も可能になる予定です。
 このシステムの具体的な運用開始時期については、公布の日から5年と想定されています。今回の改正により、これまで煩雑で時間のかかっていた戸籍収集の手間が大幅に削減され、相続手続き全体の円滑化にも期待が持てそうです。

 


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

 

2019年09月19日

《コラム》10月から適用されるマイホームの特例 消費税増税と住宅関連制度


 いよいよ本年10月からの消費税率引き上げが迫ってきました。税率引き上げの影響の大きい住宅については、税制上の対策だけではなく、税制以外の対策も取られています。

◆住宅についての税制上の対策措置
(1)住宅ローン控除等の拡充(所得税)
 消費税率10%の適用を受ける住宅の取得等については、令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に居住の用に供した場合、住宅ローン控除の適用期間が10年間から13年間に延長されます。
(2)住宅取得等資金に係る贈与税の非課税枠の拡充(贈与税)
 直系尊属からの贈与により取得した住宅取得等資金で一定の要件を満たすものについては、非課税限度額までの金額について贈与税の課税価格に算入されません。従来の非課税枠は最大1,200万円でしたが、消費税率10%の適用を受ける住宅については、非課税枠が最大3,000万円まで拡充されています。

◆税制以外の対策措置
(1)すまい給付金の拡充
 すまい給付金は、消費税率引き上げによる住宅取得者の負担を緩和するために創設した制度です。消費税率が8%に引き上げられた平成26年4月にスタートした制度で、最大30万円給付されるものでした。本年10月の消費税率10%への引き上げ後は、最大給付額が50万円まで増額されます。
 新築・中古、住宅ローンの利用の有無にかかわらず給付が受けられますが、収入(都道府県民税の所得割額)によって給付額が変わる仕組みとなっています。
(2)次世代住宅ポイント制度の創設
 次世代住宅ポイント制度とは、一定の省エネ性、耐震性、バリアフリー性能等を満たす住宅や家事負担の軽減に資する住宅の新築やリフォームをした人に対し、さまざまな商品と交換できるポイントを発行する制度です。
 住宅の新築(貸家を除く)の場合、1戸あたりに発行されるポイントの上限は35万ポイント、住宅のリフォーム(貸家を含む)の場合、1戸あたりに発行されるポイントの上限は30万ポイントです。




(情報提供 ゆりかご倶楽部)

 

2019年09月03日

(後編)空き家特例で老人ホーム等入所の具体的な確認事項を公表!国土交通省


(前編からのつづき)

 具体的に(a)は、支払い証明書、料金請求書、領収書、お客様情報の開示請求に対する回答書、通帳の写し又はクレジットカードの利用明細(最終の料金引渡し日が分かるもの)などをいいます。

 (b)は、例として、家屋を宛先住所とする被相続人宛の郵便物等や電気、水道又はガスの家屋の一定使用は認められますが、事業の用等に供されていないことが確認できていない場合の書類として、市区町村が認める者が家屋の管理を行っていたことの証明書、不動産所得がないことを確認するための地方税の所得証明書等明細(最終の料金引き落とし日が分かるもの)などを示しております。

 国土交通省は、被相続人居住用家屋確認書の申請時における提出書類(介護保険の被保険者証等の写しや老人ホーム等が保有する書類、電気、ガスの使用中止日が確認できる書類など)については、相続後や家屋・敷地の譲渡後に入手が難しいものもあるため、特例適用の検討段階において早めに準備するよう呼びかけておりますので、該当されます方はご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月17日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。





(情報提供 ゆりかご倶楽部)

 

2019年07月17日

(前編)空き家特例で老人ホーム等入所の具体的な確認事項を公表!国土交通省

国土交通省は、2019年度税制改正において、相続した空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例について、2019年4月1日以降の譲渡から、要介護認定等を受け、被相続人が相続開始の直前まで老人ホーム等に入所していた場合も、一定要件を満たせば適用対象となり、適用期限も4年延長されましたが、その一定要件について、具体的な確認事項を明示しました。

 老人ホームに入所していた場合の具体的な要件は、
①被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ、相続の開始直前まで老人ホーム等に入所をしていたこと
②被相続人が老人ホーム等に入所をしたときから相続の開始の直前まで、その者による一定の使用がなされ、かつ、事業の用、貸付けの用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこととされております。

 上記②の確認事項は、
(a)電気、水道又はガスの契約名義(支払人)及び使用中止日が確認できる書類
(b)老人ホーム等が保有する外出、外泊等の記録
(c)その他、要件を満たすことを容易に認めることができる書類のいずれかとしております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月17日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

 

2019年07月17日

(後編)2019年度税制改正:事業用小規模宅地等の特例の適用要件を見直し!


(前編からのつづき)

 具体的には、建物(附属設備を含む)又は構築物および所得税法2条1項19号に規定する減価償却資産(機械及び装置、車両及び運搬具、工具、器具及び備品等)をいいます。
 一連の改正の背景には、会計検査院によりますと、小規模宅地等の特例を適用した者の中には相続後、短期間で宅地等を譲渡していた者が多数いたことが実態調査により明らかになったことを踏まえ、事業や居住の継続への配慮という政策目的に沿ったものとなっていないとの指摘がありました。

 具体的には、会計検査院は2017年11月、相続により取得した土地等の財産を相続税の申告期限の翌日以降3年を経過するまでに譲渡していた2,907人の適用状況を調査した結果、243人が小規模宅地等の特例を適用しており、そのうち相続人が相続税の申告期限から1年以内に譲渡していたものが約6割の163件あり、1ヵ月以内に譲渡していたものが22件ありました。
 相続税の特定事業用の小規模宅地等の特例の適用要件が、税制改正において、厳しく見直されておりますので、該当されます方はご注意ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。




(情報提供 ゆりかご倶楽部)

 

2019年07月12日

(前編)2019年度税制改正:事業用小規模宅地等の特例の適用要件を見直し!


 小規模宅地等の特例は、事業用、居住用宅地等の相続税の課税価格を8割又は5割減額して相続人の事業や居住の継続等への配慮を目的に創設された制度ですが、2018年度税制改正においては、一定の要件に該当する「家なき子特例」とともに、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等が制度の適用から除外されました。

 そして、2019年度税制改正においては、特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等が除外され、すでに2019年4月1日以後に相続や遺贈により取得する宅地等の相続税から適用されております。

 ただし、その宅地に該当する場合であっても、その宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、その宅地等の相続時の価額の15%以上である場合の事業を行っていた被相続人等の事業の用に供されたものである場合には、特例の適用対象とされ、その特例が適用される事業用資産が明示されておりますので、ご確認ください。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

 

2019年07月12日

(後編)国土交通省:2019年の地価公示を公表!


(前編からのつづき)

 交通利便性や住環境の優れた地域を中心に需要が堅調で、住宅地は2年連続の上昇となりました。
 商業地については、外国人観光客をはじめとする国内外からの訪問客の増加、インフラ整備や再開発事業等の進展による利便性・繁華性の向上等を背景に、主要都市の中心部などでは、店舗、ホテル等の進出意欲が活発となっております。
 このような商業地としての収益性の高まりに加え、金融緩和による良好な資金調達環境も重なり、法人投資家等による不動産取得意欲が強いこともあってか、商業地の地価は総じて堅調に推移し、4年連続の上昇となりました。

 今年も7月には、国税庁から相続税や贈与税を計算するときの土地の評価額である路線価が公表されますが、地価公示価格は、売買実例価額や不動産鑑定士等による鑑定評価額等とともに、路線価を算定する際の基となることから、地価公示価格の上昇が7月に公表される2019年分の路線価に影響を及ぼすことがすでに予想されており、今後の動向には注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年5月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)


2019年06月14日

(前編)国土交通省:2019年の地価公示を公表!


 国土交通省は、2019年1月1日時点の地価公示を公表しました。
 それによりますと、商業・工業・住宅の全用途(全国)で1.2%のプラス(前年0.7%上昇)と4年連続で上昇し、上昇幅も3年連続で拡大しました。
 また、住宅地は0.6%(同0.3%)、商業地は2.8%(同1.9%)上昇しました。

 三大都市圏以外の地方圏でも住宅地が1992年以来、27年ぶりに上昇に転じており、地方圏のうち、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では全ての用途で上昇が継続し、全国的に地価の回復傾向が広がっていることが明らかになりました。
 国土交通省では、地価上昇の背景として、交通利便性等に優れた地域を中心に住宅需要が堅調であることや、オフィス市場の活況、外国人観光客増加による店舗・ホテル需要の高まりなどを要因として挙げております。
 住宅地については、雇用・所得環境の改善が続くなか、低金利環境の継続や住宅取得支援施策等による需要の下支え効果もあります。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年5月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

(情報提供 ゆりかご倶楽部)


2019年06月14日

(後編)国税庁:節税保険の規制強化へ改正通達案を公表!


(前編からのつづき)

 例えば、前払部分の保険料が極めて多額となると認められる最高解約返戻率が85%超の商品は、資産計上額の累積額が前払部分の保険料の累積額に近似するよう、最高解約返戻率に応じてより高い割合で資産計上することとします。

 資産計上期間経過後においても解約返戻金がおおむね最高額となるまでは、支払保険料に含まれる前払部分の保険料は逓減するものの、その累積額は増加していくことから、いずれの区分においても一定期間は資産計上額を据え置くこととし、一定期間経過後に均等に取り崩して損金の額に算入することで、保険期間の後半に充当される前払部分の保険料と資産計上額のうち損金の額に算入される金額とが対応するような取扱いとします。

 改正等に伴い、定期保険及び第三分野保険に関する取扱いを統一することから、商品類型ごとに取扱いを定めていた個別通達を廃止しますが、廃止する個別通達の適用対象となる保険契約で、改正通達公表日前の契約に係る保険料については、従来のままで、既契約については遡及適用しないことを明らかにしております
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年5月7日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)




2019年06月14日

(前編)国税庁:節税保険の規制強化へ改正通達案を公表!

 国税庁は、「法人税基本通達の制定について」(法令解釈通達)ほか1件の一部改正(案)(定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い)等に対する意見公募手続を実施しました。

 改正案によりますと、定期保険及び第三分野保険の保険料に関する原則的な取扱いは、第三分野保険の保険料は危険保険料及び付加保険料のみで構成されており、その保険料の構成は定期保険と同様と認められることから、従来の定期保険の取扱いに第三分野保険の取扱いを加え、これらの保険料に含まれる前払部分の保険料が相当多額と認められる場合を除いて、期間の経過に応じて損金の額に算入することとします。

 定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱いは、法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人等を被保険者とする保険期間が3年以上の定期保険又は第三分野保険で最高解約返戻率が50%を超えるものに加入して、その保険料を支払った場合には、課税所得の期間計算を適正なものとするため、その支払った保険料の額については、最高解約返戻率に応じ、取り扱うこととします。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年5月7日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)


2019年06月14日

《コラム》消費税改正に向けた次世代住宅ポイント制度とは?


◆消費税率引上げに対しての政策
 消費税率の引上げが行われると、引上げ前の駆け込み需要の後、需要は大きく低下します。この需要変動に対して、特に「内需の柱」と位置付けられている住宅関連投資の反動減を少しでも軽減させようと、消費税率10%の際には住宅ローン控除等の既存制度に加えて、ポイント制度を新設しました。それが「次世代住宅ポイント制度」です。対象となる建物は2019年10月1日以降に引渡しを行うもので、ポイント申請受付は工事請負契約後から申請できるため、2019年6月3日開始予定です。

◆内容は、商品が貰えるポイント制度
 次世代住宅ポイント制度は、住宅の新築・住宅のリフォームにおいて、エコ住宅や耐震住宅・バリアフリー住宅等、「省エネ・環境」、「安全・安心」、「健康長寿・高齢者対応」、「子育て支援、働き方改革」に資する住宅・工事内容である場合、その内容に応じてポイントがもらえるものです。
 新築の上限は1戸当たり35万ポイント、リフォームの場合は30万ポイントとなりますが、若者・子育て世帯がリフォームを行った場合は上限45万ポイント、既存住宅を購入し、リフォームを行う場合は、各リフォームのポイントを2倍カウントします。
 貰ったポイントはカタログサイトから「省エネ・環境」、「防災」、「健康」、「家事負担」、「子育て」、「地域振興」のカテゴリに該当する商品と交換ができます。なお、現在交換商品を募っており、出品業者としては通信販売の実績等の制約はありますが、申請が通ればポイント事務局の商品一覧に掲載してくれるようです。該当するジャンルが幅広いので、該当する商品を取り扱っている企業も多いはずです。一度検討してみてもいいかもしれません。

◆ふるさと納税との兼ね合いも
 ポイント商品の要件を見てみると「地域の振興」に資する商品については追加要件に「H31年度のふるさと納税の返礼品として紹介されていること」とあります。ふるさと納税は今年6月からお礼の品に関して規制が入ります。ふるさと納税と併せて次世代住宅ポイントでも地場産品については利用可能としたことで、地方自治体への「アメとムチ」の「アメ」の部分として役割を持たせようとしたのでしょうか?


 (情報提供 ゆりかご倶楽部)



2019年06月13日

(後編)2019年度税制改正:空き家に係る特別控除、制度の拡充と4年延長へ


(前編からのつづき)

 特例創設の趣旨が、居住用家屋が空き家となることを防ぐ目的であることから、被相続人が死亡した時点で1人暮らしであった場合に限定され、区分所有建物は除かれるなど、あくまで相続から譲渡まで引き続き空き家でなければならず、これまでの要件は厳格でしたが、今回の改正において、一定の要件を満たせば、被相続人が老人ホーム等に入所していた場合も対象に加えられました。

 具体的な要件としては、
①被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ、相続の開始直前まで老人ホーム等に入所をしていたこと
②被相続人が老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前まで、その者による一定の使用がなされ、かつ、事業の用、貸付けの用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこととしております。

 なお、この改正は、2019年4月1日以後に行う被相続人居住用家屋又はその敷地等の譲渡について適用されますので、該当されます方はご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年5月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。



(情報提供 ゆりかご倶楽部)


 
2019年06月13日

(前編)2019年度税制改正:空き家に係る特別控除、制度の拡充と4年延長へ


 2016年度税制改正において、所有者不明土地の増加とともに、居住用家屋が空き家となってしまうことを防止するため、相続した空き家を一定要件のもとで譲渡した場合には、居住用財産の譲渡所得の特別控除に該当する譲渡とみなして同控除を適用する特例が創設されました。
 しかし、同特例は、2019年12月末で期限切れとなってしまうため、2019年度税制改正において、制度の拡充を行った上で、適用期限が4年延長されました。

 同特例の適用要件は、
①相続開始直前に被相続人のみが居住していた1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋(区分所有建物を除く)及びその敷地で、相続の開始日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること
②譲渡価額が1億円を超えないこと
③譲渡をする家屋・土地は、相続の時から譲渡の時まで事業用、貸付用、居住用に使われていないことで、居住用財産譲渡の場合の3,000万円の特別控除が適用できます。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年5月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。



(情報提供 ゆりかご倶楽部)



2019年06月13日

《コラム》新元号と提出書類


◆平成40年は令和何年?
 西暦2019年5月1日から、日本の元号は「令和」となり、それに伴って国税庁から「新元号に関するお知らせ」というものが出ています。
 それによると「納税者の皆さまからご提出いただく書類は、平成表記でも有効なものとして取り扱うこととしております」となっています。ちなみに平成40年は令和で言えば10年です。今回は区切りが良いので変換しやすいですね。

◆他の役所の書類は?
 改元に伴う元号の年表示の取り扱いについては「関係省庁連絡会議申合せ」という通知が出ています。
 それによると原則各府省が作成する文章は、改元日以降は「令和」を使う。また、やむを得ず「平成」の表記が残る場合でも、該当表示は有効となるが、混乱を避けるように、訂正印や手書きの修正、文章や画面に「表記が平成でも有効」と注意書き等を入れるように推奨しています。
 また、「国民が各府省に申請等を行う場合において、改元日以降の年の表示が平成とされていても、有効なものとして受け付けるものとする」と記載されています。やはり平成でもOK、ということでしょう。

◆法律や政令はどうなるのか
 法律及び政令についても「平成」を用いて改元日以降の年を表示している場合はそのまま有効となります。
 また「改元のみを理由とする改正は行わない」としていて、「改元以外の理由により改正を行う際についでに直す」という方針のようです。ただし「改正しないと支障がある場合は、個別に検討して措置します」としているあたり、「念には念を」の気持ちを感じる文章です。

◆穏やかに少しずつ変わる改元
 今回の改元は前もって行われる日が分かっており、システム関係の方は「もっと時間を」と思ったかもしれませんが、対応は徐々に浸透してゆけばよいといった、柔軟な感じがします。
 ただ、外務省は西暦表記を検討する等、変化する姿勢もありました。この令和という時代、いったいどのように世の中は移ろってゆくのでしょうか。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)
 



2019年06月13日

《コラム》消費税改正に向けた住宅ローン控除周辺の改正


◆住宅ローン控除は平準化を目指し改正
 消費税率の引上げに際し、需要変動の平準化の観点から、住宅ローン控除についての改正が行われます。
 2019年10月から20年12月までに入居する住宅で、消費税が10%となる住宅については、控除期間が現行の10年から13年に延長されます。
・1~10年目:住宅ローン年末残高×1%(※最大40万円)
・11~13年目:次のいずれか少ない金額
 ①住宅ローン年末残高×1%
 ②取得価額(※最大4000万円)×2%÷3
※長期優良住宅等の場合:50万円・5000万円

◆「すまい給付金」も拡大
 住宅ローン控除は、支払っている所得税等から控除する仕組みであるため、収入が低いほどその効果が小さくなります。負担軽減効果が十分に及ばない収入層に対して、住宅ローン減税と併せて消費税率引上げによる負担軽減を図るのがすまい給付金です。
 このすまい給付金についても、消費税増税に併せて、給付額の上限引き上げと適用となる収入帯の増加が予定されています。
 配偶者控除ありのモデルケースの場合、消費税8%の場合は給与収入で425万円以下の場合、30万円の給付が受けられましたが、10%の場合は給与収入が450万円以下の場合は50万円の給付が受けられます。また、10万円の給付を受ける場合で見ると8%時は510万円以下だったのが10%では775万円以下となります。なお、給付を受けられるかどうかは都道府県民税の所得割額で判定されるので、ふるさと納税等で税額を減らしていると、さらに有利な条件で給付が受けられる可能性があります。

◆さらにポイント制度も新設
 国土交通省は、「良質な住宅ストックの形成」をめざし、消費税率10%で一定の性能を有する住宅の新築やリフォームに対して、商品等と交換できるポイントを発行する「次世代住宅ポイント制度」も開始予定です。 この制度は「環境」「安全安心」「健康・高齢者」「子育て・働き方」に資する住宅の新築やリフォームが対象となり、上記に資する商品を貰える予定となっていますが、今のところどんな商品が貰えるかは、まだ公表されていないようです

(情報提供 ゆりかご倶楽部)


2019年06月12日

《コラム》平成31年度税制改正大綱 資産課税編

◆個人事業者版の事業承継税制創設
 平成30年度税制改正では、非上場会社の事業承継税制の大胆な見直しが行われましたが、これに続き31年度改正では、個人事業者の事業承継税制が創設されました。
 総務省の調査では、平成37年には個人事業者の73%(150万人)が70歳以上となると報告され、世代交代を後押しする施策が求められています。そのため、10年間の時限措置として、承継資産(土地・建物・機械等)に係る贈与税・相続税の100%が納税猶予される制度が整備されます。
 なお、この制度は小規模宅地等(特定事業用宅地等)との選択適用になります。

○個人事業者の事業用資産の納税猶予(相続税)
対象者:認定相続人(承継計画の認可)
適用期間:H31.1.1~H40.12.31
要件:①相続又は遺贈により特定事業用資産を取得し、事業を継続していくこと②申告期限までに担保提供・申請書提出
対象資産:特定事業用資産(不動産貸付事業除く)
①土地(地積400㎡まで)、②建物(床面積800㎡まで)、③一定の償却資産
※青色申告書に添付する貸借対照表に計上されているもの
承継後:継続届出書を税務署に提出

◆特定事業用宅地等(小規模宅地)の見直し
 小規模宅地等の減額制度の濫用を防止する観点から、特定事業用宅地等から相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等が除かれることとなります。ただし、その宅地の上で事業供用される償却資産の価額が土地の価額の15%以上であれば、適用対象とされます(H31.4以後の相続より適用)。

◆民法の成人年齢引下げに伴う改正
 平成34年4月以後の相続・贈与より、次の年齢が20歳から18歳に引き下げられます。
・相続税:未成年者控除の対象者の年齢
・贈与税:下記の受贈者の年齢要件
①相続時精算課税制度、②直系尊属から贈与を受けた場合の特例税率、③非上場株式等に係る贈与税の納税猶予

◆一括贈与非課税に受贈者の所得要件が追加
 「教育資金」、「結婚・子育て資金」の一括贈与非課税については、受贈者の所得要件が設けられることとなりました。平成31年4月以後の贈与からは、受贈者の贈与前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合には適用できません。また、23歳以上の趣味の習い事代は「教育資金」の範囲外とされました(H31.7以後の贈与より)。




(情報提供 ゆりかご倶楽部)

 


2019年06月12日

《コラム》不動産管理会社に支払う不動産管理料の適正額


 賃貸物件を所有する個人が不動産管理会社を設立して、不動産の管理をその管理会社に委託し、管理料を支払うことで所得を分散させるという一般的な節税手法があります。
 支払った管理料の分を必要経費とし個人の所得税を抑えることができるというものですが、不動産管理料が不当に高額である場合、適正額を超えた部分についてはその経費性を否認されることとなるため、留意が必要です。

◆管理料の相場と決定方法
 同族経営の不動産管理会社に支払う管理料は、事業運営方式にもよりますが5%~15%が相場です。過去の裁判例を参考にして手数料率を決定するという方法もありますが、表面的な数字ではなく、不動産管理会社が実際に行う管理業務の内容、その業務の周辺相場、同様の業務を他業者に委託した場合にいくらまでなら支払うかが管理料決定の基準となります。

◆同族会社の行為計算否認規定
 不動産管理料がその管理業務の実態と照らし合わせて「不当に高額である」として否認される場合にその根拠となるのが、所得税法第157条「同族会社等の行為又は計算の否認等」の規定です。当該規定は、課税の公平を図る趣旨から、所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合に適用されます。同族会社であるがゆえに第三者取引には通常見受けられないような料金設定がなされた場合、その不相当に高額な部分が必要経費として認められないこととなります。

◆適正額と業務上の留意点
 管理料については、個々の物件の規模、地域性、管理業務の具体的な内容を総合的に勘案し、業務内容に則して決定することが必要です。また、修繕費や共益部分の費用をどちらで負担するのかを事前に決定したり、さらには業務日誌を作成する、メールやFAXといった日々の業務のやり取りを保管するなど業務実態を明確にしておくことも重要です。



(情報提供 ゆりかご倶楽部)


2019年06月10日

《コラム》自筆証書遺言保管制度の新設と遺言書の方式緩和

◆自筆証書遺言保管制度の新設 平成30年7月6日、法務局における遺言書の保管等に関する法律が成立し、法務局において自筆証書遺言を保管する制度が新たに設けられることとなりました。 新たな制度では、予め保管申請しておくと、遺言者が死亡した後に相続人が法務局において、遺言書保管事実証明書及び遺言書情報証明書の交付請求、遺言書原本の閲覧請求をすることができるようになります。また、相続人の1人に遺言書情報証明書を交付した場合または遺言書の閲覧をさせた場合には、法務局から他の相続人等に遺言書が保管されている旨が通知されることになります。

◆紛失・改ざんなどのリスク 自宅で自筆証書遺言を保管した場合、紛失・亡失の可能性がありますし、遺言書の内容によっては相続人による廃棄、隠匿、改ざんの恐れがあります。実際、その内容に不満を持った相続人が意図的に廃棄する、内容を書き換えるといったことにより相続手続きや相続税申告に支障が出るケースも見受けられます。

◆相続手続きと相続税申告をスムーズに 相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。ところが、相続財産の把握や財産分割には思いのほか時間がかかるものです。自筆証書遺言があった場合でも家庭裁判所で検認という手続きが必要になり、最低でも1か月はかかるのが現状です。保管制度を利用すると検認は不要ですし、自筆証書遺言で財産目録と遺言者の意思表示が分かりますので、相続手続きと相続税申告書作成がスムーズにできると期待されます。なお、保管制度の施行日は今後政令で定められることになりますが、施行前には法務局に遺言書の保管を申請することはできませんのでご注意ください。

◆遺言書の方式緩和 現民法では自筆証書遺言は全文を自筆する必要がありますが、民法改正によりパソコンで作成した財産目録、通帳のコピー、登記事項証明書等の自書によらない財産目録を別途添付することが可能となります。 財産目録には遺言者の署名押印を行うことで偽造を防止します。この改正は平成31年1月13日から施行されます


(情報提供 ゆりかご倶楽部)


2019年06月05日

《コラム》固定資産税は気を付けて

◆固定資産税は賦課決定  所得税や法人税は納税者本人が税額を計算し申告して税金を納めます。  それに対し、固定資産税は役所が不動産を一方的に評価して納税額を決め、それを納税者が納めます。

◆固定資産税にはプロがいない お役所のやることだから間違いはないだろうと思いがちですが、結構間違いは多いのです。その原因は対象不動産に対して圧倒的に評価人員が不足しているということです。東京都の場合、都内に土地は約221万筆、家屋は約160万戸あると言われています。これらを全て実地調査することは不可能と言われています。また、都の職員は都税事務所に就職するのではなく東京都に就職し、職場のローテーションで固定資産税の現場に配属されますが、定年まで固定資産税係ということはなく2~3年で別の部署に配属されますので常に素人集団です。こういった傾向はどの自治体も同じです。

◆まずは納税通知書を見直してください 固定資産税の納税通知書は読みにくいでしょうが、以下のことを確認してください。(1)土地の所在・家屋の所在、家屋番号 自分のものか確認してください。(2)登記地目・家屋の種類・用途、構造 現況と異なっていないか?(3)地積・家屋面積 実際の面積と相違がないか?ただし、実測をする場合はかなりの費用が掛かります。(4)価額 住宅用地の場合、評価額と課税標準額は異なります。当然課税標準額の方が小さいはずです(ちなみに住宅用地の場合、住宅1戸につき200㎡までは1/6です)。

◆おや?と思ったら 自治体の窓口に出向いて課税資料を請求してください。  土地なら「土地現況調査票」、家屋なら「再建築評点計算書」「基準年別計算書」(自治体により名称が異なる場合があります)が必ずあるはずです。  明らかにおかしい場合は、「審査申し出」を行ってください。しかし「審査申し出」は原則として3年に1回の基準年度の限られた期間ですので、窓口で「再調査」の依頼をしてみてください、自治体により対応していただける場合もあります。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2019年06月03日

《コラム》新しい権利 配偶者終身居住権


◆新しい法定された権利の創設
 民法が改正され、配偶者終身居住権が創設されました。被相続人の配偶者が自宅に住み続けることができる権利で、高齢化が進む中、残された配偶者の住居や生活費を確保し易くする、というのが狙いです。
 子が自宅の所有権を相続し、被相続人の配偶者が終身居住権を相続する、というのが最も典型的な予想ケースとされています。
 所有権が第三者に渡っても、そのまま自宅に住み続けることができる、という排他的権利です。

◆評価額と権利の性質
 居住権の評価額は平均余命などを基に算出され、不動産の価額は、終身居住権の価額と終身居住権付不動産の価額とに分割されることになる、と法務省法制審議会民法部会で審議されていました。相続税評価額がどうなるかは未定ですが、法制審の審議を承けたものになると思われます。
 終身居住権の譲渡資産性は弱そうですが、登記されることを前提にしているので、債権でありながら、借地権のような物権的性格を強く持ちそうです。

◆所得税への影響
 相続により承継する終身居住権と終身居住権付不動産のそれぞれが、譲渡の局面に立ち至った場合は、それらの承継取得原価は、借地権と底地の関係のように、各評価額の比で按分されることにならざるを得ません。ただし、それには、借地権の法律政令の規定のような終身居住権に係る新たな規定の創設が必要です。

◆終身居住権の一身専属性
 終身居住権は一身専属権として死亡と共に消滅するものです。その自然消滅によって、終身居住権付不動産は何の制限もない不動産に生まれ変わります。その時に、終身居住権の消滅益を認識すべきか、終身居住権に対応することになる承継取得原価はどのような扱いになるか、なども必然の検討テーマになります。

◆自然消滅借地権が参考になる
 自然消滅借地権の場合は、借地権の消滅益を認識せず、借地権の取得価額は自然消滅になります。これに準ずるとすると、終身居住権の消滅益は認識せず、それに対応している取得価額も自然消滅となり、誰にも承継されません。



(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2019年05月16日

道のはなし(後編)

では、道路が土地の評価に与える影響で代表的なものを挙げます。


①セットバック・・建築基準法42条2項に接道している宅地については、建物の改築や立て直しをする際、原則、道路の中心線から2mを道路と土地の境界線として土地を後退(セットバック)しなければなりません。財産評価基本通達においてもこれを勘案しそのセットバックしなければならない部分の土地評価を70%減額することとなっています。


②都市計画道路予定地(建築基準法42条1項4号)の区域にあたる宅地・・その土地について0.7~0.98の補正率を乗じて評価します。


③建築基準法に規定する接道義務を満たしていない宅地、無道路地・・その接道義務を満たすための通路開設部分(2mの道幅)を減額して評価します。


④私道の評価・・建築基準法に規定する道路ではなく、接道する土地の所有者等の所有地となっている道(私道)はその区分により以下の通り評価します。(a)不特定多数の者の通行の用に供する私道(いわゆる通り抜け私道)はゼロ評価(b)特定の者の通行の用に供する私道(行き止まりのなっている私道等)は30%評価


以上は財産評価基本通達に載っている代表的なものですが、相続税(贈与税)の土地評価実務においては、財産評価基本通達による評価に入る前にまず、土地及びその周辺の現場視察による土地の利用価値の確認、市役所等の役所調査を通じて建築基準法や都市計画法その他税法以外の法規による規制の確認が必要です。調査をしていて予想外のことにぶつかる事もあります。


土地の評価はその土地の個別事情により大きく評価額が変わる可能性があり、また守備範囲が税法を超えていく場合もありますので、財産評価の中でも特に土地評価は専門性の高い分野といわれています。



2019年05月15日

道のはなし(中編)

建築基準法では道路として以下の種別で分類し、定めています。(以下①~⑦まで大阪市のホームページ「建築基準法上の道路の種別」より抜粋)

①42条1項1号・・道路法による道路(国道、府道、市道のみで構成された道路幅4m以上の道路)

②42条1項2号・・都市計画法、土地区画整理法、旧住宅地造成事業又は都市再開発法等による道路(都市計画として決定される都市計画事業・土地区画整理事業等により築造された道路)

③42条1項3号・・法施⾏の際すでにあった道(都市計画区域の決定受けたとき(建築基準法、施⾏の⽇にすでに都市計画区域の指定を受けていた区域については建築基準法施⾏の⽇)に現に存在する道路幅4m以上ある道

④42条1項4号・・道路法、都市計画法、⼟地区画整理法又は都市再開発法等で2年以内に事業が執⾏される予定のものとして特定⾏政庁が指定したもの(実際には道路としての効
用はまだ果たしてなく、2年以内にその事業が執⾏されるものとして特定⾏政庁が指定したもの)

⑤42条1項5号・・土地を建築物の敷地として利用するため、政令で定める基準に適合する私道を築造し、特定行政庁から指定を受けたもの(道の基準は政令で定めるほか、土地の状況等により各特定行政庁で政令と異なる基準を定めることが出来る(位置指定道路))



⑥42条2項・・法施行の際、現に建物が立ち並んでいた道路幅4m未満の道で特定行政庁が指定したもの(道路の中心線から2mの線をその道路の境界線とみなす。但し道路の片側が、がけ地、川、線路等に沿ってある場合は道路の反対側から一方後退4mの線を道路の境界線とみなす)



⑦附則5項・・市街地建築物法第7条但書きによって指定された建築線で、その間の距離が4m以上のもの(道路法による道路のみで構成された道路幅4m未満の道路)




2019年05月15日

道のはなし(前編)


 相続税申告のための土地評価の際、その土地に接する道がどのような道なのか調査を
します。相続税の財産評価の拠り所となる法規は相続税法、その取扱いは財産評価基本通達となりますが、道については主に建築基準法です。日頃、税法や通達によって業務をしている税理士にとっては馴染みにくい法規だと思います。

ところが、国税庁の路線価も道に付されていることでも分かるように土地の財産評価と(建築基準法に規定する)道(道路)には密接な関係があります。

建築基準法とは建築物の敷地。構造、設備及び用途に関する最低限の基準を定めて。国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資すること(第1条)を目的とした法律です。それをもとに市町村等の各自治体で建築安全条例、建築基準法施行規則が定められ運用されています。

建築基準法では道路とは幅員が原則4m(例外的に6m)以上の道とし、道路に接していない土地には建築物を建てられません。2m以上の接道義務もあります。また高速道路(自動車専用道路)のみに接している場合は接道義務を満たしていることになりませんが、農道には接している、広い空き地に接している等の場合で建築審査会の同意を得て許可された道路は43条但し書き道路として例外的に接道義務を満たしていることになります。



2019年05月07日

相続税申告書添付書類の見直し(後編)


(前編からのつづき)

 法定相続情報一覧図の写しとは、相続登記の促進を目的として、2017年5月から全国の法務局で運用を開始した法定相続情報証明制度を利用することで交付を受けることができる証明書をいい、戸籍に基づいて、法定相続人が誰であるかを登記官が証明したものです。
 相続手続きは、法定相続情報一覧図の写しを利用することで、戸籍関係の書類等一式を何度も提出する必要がなくなりました。

 これまで相続人は、遺産に係る相続手続きに際し、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍関係の書類等一式を全て揃えた上で、同じ書類を管轄の異なる登記所や各金融機関など、相続手続きを取り扱う各種窓口に何度も提出する必要がありましたが、法定相続情報一覧図の写しは、様々な相続手続きに利用されることで、相続手続きに係る相続人・手続きの担当部署双方の負担の軽減が期待されています。

 なお、法定相続情報一覧図の写しは、相続人等が亡くなった人の本籍地・最後の住所地、申出人(相続人など)の住所地などを管轄する法務局のいずれかで、必要種類と合わせて申出をすることで、無料で交付を受けられます。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年6月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。



(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2019年04月23日

相続税申告書添付書類の見直し(前編)


 2018年度税制改正において、相続税申告の添付書類の改正も行われ、相続税法施行規則の改正により、2018年4月1日以後に提出する申告書から法務省が行っている法定相続情報証明制度で取得が可能な法定相続情報一覧図についても、一定の条件をもとに添付書類として認められております。
 これまでは相続税の申告書には、戸籍の謄本で被相続人の全ての相続人を明らかにするものを添付しなければならないこととされていました。

 しかし、2018年4月1日以後は、戸籍の謄本に代えて、図形式の法定相続情報一覧図の写し(子の続柄が、実子又は養子のいずれであるかが分かるように記載されたものに限る)あるいは戸籍の謄本又は法定相続情報一覧図の写しをコピー機で複写したもののいずれかの書類を添付することができるようになりました。
 ただし、被相続人に養子がいる場合には、その養子の戸籍の謄本又は抄本(コピー機で複写したものも含む)の添付も必要となりますので、該当されます方はご注意ください。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年6月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。




(情報提供 ゆりかご倶楽部)



2019年04月23日

平成30年度税制改正 資産課税編2


 今回は、特定一般社団法人等を中心にその他の主な改正項目を概観してみます。

●特定一般社団法人等への相続税の課税
 当該法人等の役員(理事に限る。以下同じ)である者(相続開始5年以内のいずれかの時において当該法人等の役員であった者を含む)が死亡した場合には、当該法人等が当該法人等の財産を同族役員(被相続人も含む)の数で等分した額を当該被相続人から遺贈により取得したものとみなして、当該法人等に相続税(既に課された贈与税額を控除)を課税する。
 なお、(1)特定一般社団法人等とは、公益・非利型法人その他の一定の法人以外の一般社団・財団法人で、次のいずれかの要件を満たす一般社団法人等です。①相続開始の直前における同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超えること。②相続開始前5年以内において、同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること。
(2)同族役員とは、当該法人等の理事のうち、被相続人、その配偶者又は3親等内の親族その他当該被相続人と特殊の関係にある者(被相続人が会社役員となっている会社の従業員等)を言います。
 この改正は、平成30年4月1日以後の当該法人等の役員の死亡に係る相続税について適用されます。
 但し、同日前に設立された当該法人等については、平成33年4月1日以後の当該法人等の役員の死亡に係る相続税について適用され、平成30年3月31日以前の期間については上記(2)②の2分の1を超える期間に該当しない、となっています。
 しかし、平成30年4月1日から同族理事を2分の1未満に見直しておく必要があるかと思われます。

●その他の改正項目
(1)農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度については、①貸付けられた生産緑地その他一定の農地の貸付にも納税を猶予する。また、②三大都市圏の特定市以外の生産緑地について、営農継続要件を終身(現行:20年)とする等幾つかあります。
 また、(2)相続税の申告書の添付書類については、戸籍謄本のコピー、法定相続情報一覧図の写しでもよくなります。
 前者の適用は、都市農地の貸借円滑化に関する法の施行の日以後、後者の適用は、平成30年4月1日以後に提出する申告書からとなっています。





<情報提供:ゆりかご倶楽部>

2019年04月23日

平成30年度税制改正 資産課税編1


先ず、事業承継税制と小規模宅地等の特例の改正について、以下その内容を概観してみます。

●事業承継税制の特例の創設 現行の事業承継税制(非上場株式の贈与税・相続税の納税猶予)に加え特例措置を創設しました。その内容は次のとおりです。

(1)適用要件の緩和①全株式が納税猶予の対象となる。②猶予割合100%。③雇用要件は弾力化され、5年後に経営の悪化等で平均8割の要件を満たさなくなっても、一定の要件を充足すれば納税猶予の期限は確定しない。④代表者以外の者からの株式贈与も対象とする。⑤承継者が贈与者の推定相続人以外の者でも一定の要件を満たせば相続時精算課税の適用を受けることができる。⑥承継人は最大3人まで可、その全員が代表権をもつ。

(2)環境変化に対応した負担軽減 経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、5年経過後に非上場株式の譲渡、合併により消滅、又は解散を余儀なくされた場合には、その時の株式を相続税評価額で再評価して贈与税額等(贈与、相続、遺贈を含む)を計算し、当初の猶予税額を下回る場合には、その差額を、免除する(譲渡、合併の場合には制限あり)。 この特例適用は、平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間の贈与等です。しかし、適用可否の需要な点は、平成30年4月1日から平成35年3月31日の5年間に一定の承継計画を都道府県に提出、かつ、経営承継円滑化法の認定を受けていることが前提となっていることです。



●小規模宅地等の特例の見直し

(1)持ち家に住んでいない者に係る特定居住用宅地等の特例の対象者の範囲から、次の者を除外する。

①相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者の同族会社等が有する国内にある家屋に居住したことがある者。

②相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有したことがある者。

(2)貸付事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等(相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者が当該貸付事業に供しているものを除く)を除外する。 

適用は平成30年4月1日以降の相続又は遺贈からです。なお、(2)は、同日前から貸付事業の用に供されている宅地等には適用されません。



<情報提供:ゆりかご倶楽部>

2019年04月23日

《コラム》法定相続情報証明制度とは

◆所有者不明の不動産が増加中
 近年、相続が発生しても新しい所有者へ所有権を移転させる相続登記が行われず、所有者不明の不動産が増加していることが社会問題になっています。この問題を解消するため、様々な取り組みが検討されていますが、昨年から始まった「法定相続情報証明制度」もそのひとつです。

◆法定相続情報証明制度とは
 被相続人が死亡し相続が発生した場合の手続きは、相続登記だけに限りません。金融機関における預貯金・有価証券の名義変更や払戻手続き、保険請求手続きなど、相続にまつわる手続きは様々です。これらの各種手続きを行うためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本など、相続関係を証明する資料一式を、手続きの都度原本で提出しなければならず、相続人にとって大きな負担になっていました。
 こうした負担を軽減し、相続登記を促進しようと始まったのが「法定相続情報証明制度」です。相続人が法務局に相続関係を証明する戸籍謄本や必要書類とともに、相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すると、以降は、法務局がこの図の写しを戸籍上の法定相続人の証明書として発行してくれるというものです。この証明書を各種相続手続きに利用することにより、相続人や金融機関等の負担軽減につながることが期待されます。

◆今後さらなる改善の見込み
 しかしながらこの証明書、現状は被相続人の子について、実子・養子の別や続柄については基本的に記載せず「子」としてのみ表示されている点など、情報量の不足も指摘されており、現在、記載内容等の見直しが進められています。既に法務省による意見募集が終了しており、今後さらなる改善が見込まれています。
 戸籍謄本など相続関係を証明する資料一式が必要な相続手続きを、複数の機関で行う場合に、できるだけ費用をかけず、かつできるだけ短期間で行えるのがこの制度のメリットです。制度を有効活用し、相続手続きの負担をできるだけ最小限にとどめたいですね。


<情報提供:ゆりかご倶楽部>

2019年04月23日