税法と民法で異なる「持ち戻し」 提供:エヌピー通信社
年末に決定する2023年度税制改正大綱に向けて、生前贈与の「持ち戻し」の期間を現行制度の3年から延長する案が浮上しています。持ち戻しとは、相続発生までの3年間に行われた生前贈与について、贈与ではなく相続によって得た財産として扱い、相続税を課すルールのこと。死期を悟ってからの駆け込み贈与による税負担の圧縮を防ぐために設けられています。
覚えておきたいのは、この3年持ち戻しルールは、あくまで税法上の規定だということ。というのは、民法にも持ち戻しルールが存在するからです。
民法の持ち戻しとは、特定の法定相続人への生前贈与があった時に、「遺産の前渡し」があったとしてその分を遺産に合算して遺産分割や遺留分の算定を行うというもの。相続税と似ていますが、こちらは3年ではなく相続発生までの10年間が対象となっています。かつては何十年前の贈与であっても対象とするという恐ろしい制度でしたが、さすがにそれはやり過ぎとの声が多かったためか、2018年に改正された民法によって10年間に短縮された経緯があります。
なお税法、民法ともに、20年以上連れ添った配偶者への贈与については、持ち戻さなくてもよいとする優遇制度が設けられています。税法には以前からあったルールですが、民法では18年の民法改正時に、持ち戻し期間の短縮に併せて導入されました。
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